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連載「つたえること・つたわるもの」(40)

耳で聞いた「話しことば」を、目で読む「話しことば」にする。

連載 2018-05-08

 すでに本コラム⑭でも紹介したことがあるが、『木のいのち木のこころ』(西岡常一・小川光夫・塩野米松著、新潮文庫、1993年)という本がある。三人目の著者、塩野米松さんは4回も芥川賞候補になった作家で、聞き書きの名手。昭和の大修理を手掛けた最後の宮大工で棟梁、西岡常一さんの語り口原稿は、何回も西岡棟梁のもとに通った、塩野さんの「聞き書き」(語り口を活かす編集)という尽力があった。

 耳で聞いた「話しことば」目で読む「話しことば」にする、本物の「話しことば」を味わってみる。

 近ごろの道具は昔に比べて質が落ちてます。鉄の作り方が違うんでしょうな。鉄は硬ければいいというもんやないんです。「あま切れ」といいまして、柔らこうてよく切れるものがいいんです。そんなものにはめったに出会いませんわな。硬い刃物は硬いものに会いますと、ぱりんと折れます。あま切れのものやったら、曲がることはあっても折れません。それでいて時間がたつと刃が戻りますのや。日本刀や昔の床屋さんの日本剃刀なんかにはいい鉄が使われていましたな。
(同書59ページ)

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