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連載「つたえること・つたわるもの」178

気になる日本語――同音異義語、異字同訓をダジャレ、謎かけであそぶ。

連載 2024-02-13

出版ジャーナリスト 原山建郎
 令和6年度文教大学オープン・ユニバーシティ(社会人向け教養講座)は、遠藤周作関連では、①遠藤周作の「病い」と「神さま」その1――『新約聖書』から「慰めの物語」を読む。②遠藤周作の「病い」と「神さま」その2――母、妻、父、兄、息子の「物語」を読む、の2講座。日本語関連では、①たのしい日本語――おもしろ〈ことば〉その1 同訓異字、しりとり、回文(逆さことば)であそぶ。②たのしい日本語――おもしろ〈ことば〉その2 オノマトペ、いろは歌留多、落語の謎かけ、サラリーマン川柳をたのしむ、の2講座をそれぞれ予定している。そこで、いま調査・作成中の関連資料の中から、この5月に開講する「たのしい日本語――おもしろ〈ことば〉」の内容をいくつか要約しながら紹介しよう。

 今回のテーマは、「同音異義語、異字同訓をダジャレ、謎かけで遊ぶ」である。
まず「同音異義語」とは、(日本語の「音読み」)発音が同じで意味(語意)の異なる語をいう。たとえば、【いどう:移動、異同、異動、医道など】、【かき:柿、下記、夏季、牡蠣、花卉】、【いし:医師、意思、遺志】、【きかん:期間、機関、器官、気管、帰還、季刊など】、【しんせい:申請、新生、親政、神聖、心性、新星など】、【せいか:製菓、成果、盛夏、生家、聖歌、生花、聖火など】がある。ちなみに、日本語の「音読み」には、伝えられた年代によって呉音、漢音、唐音があり、たとえば、同じ漢字の「明」を「ミョウ(呉音)」「メイ(漢音)」「ミン(唐音)」のように、異なる発音があった。

 また「同訓異字」は、同じ訓読みでも漢字が異なる語のことで、たとえば、【あう:合う・会う・逢う・遭う・遇う】、【おさめる:治める・主める・統める・経める・収める・納める・修める】、【みる:見る・観る・看る・視る・覧る・診る】、【かたい:固い・堅い・硬い・剛い・難い】などがある。

 講演や会話など耳で聞く、同じ発音の日本語(話しことば)は、相手の話の文脈(意味内容のつながりぐあい)で判断するため、ときに「全く違う意味に受けとられるリスク」がある。一方、目で見る本や手紙の文章を読む場合には、書かれた漢字(表意文字)で「その意味を正確に理解できる強み」がある。

 ところで、国立国語研究所のWebサイトにあった【「異字同訓」の漢字の用法】(1972年6月28日 国語審議会漢字部会)の説明には、【1この表は、同音で意味の近い語が、漢字で書かれる場合、その慣用上の使い分け の大体を、用例で示したものである。/2その意味を表すのに、二つ以上の漢字のどちらを使うかが一定せず、どちらを用いてもよい場合がある。又、一方の漢字が広く一般的に用いられるのに対して、他方の漢字はある限られた範囲にしか使われないものもある。/3その意味を表すのに、適切な漢字のない場合、又は漢字で書くことが適切でない 場合がある。このときは、当然仮名で書くことになる。】と説明されており、【とく・とける:解く・解ける── 結び目を解く。包囲を解く。問題を解く。会長の任を解かれる。ひもが解ける。雪解け。疑いが解ける。/溶く・溶ける──絵の具を溶く。砂糖が水に溶ける。地域社会に溶け込む。】のような用例が示されている。
ちなみに、「とく」の異字同訓には、これらの用例のほかに「道理を説く」「長い髪を梳く」もある。もとは〈話しことば〉であった「やまとことば」の発音を、漢字の字源(文字の形や意味の起原)に沿う形で仮借(※同じ音を表す漢字を借りてあてたもの)した、日本語の「訓読(漢字に国語をあてて読むこと)」という想像力+創造力の素晴らしさが実感できる。ここで、☆「異字同訓」の漢字の用法(国語審議会漢字部会、1972年)と、■『字訓』の古語、漢字の成立ち(白川静著、平凡社、2000年新装版第二刷)を比較しながら、気になる日本語――異字(漢字)同訓(やまとことば)をさがしてみよう。

 たとえば、AとBが接近する・AにBがフィットする・AはBに適している・AがBに出くわす、などを表す「あう」を、☆「異字同訓」の用例、■古語・同訓の漢字の原意と成立ちから見てみよう。なお、漢字の(さい)は、コラムでは表示できないので、近似したアルファベットをカッコ内に示した。

 ☆あう:合う── 計算が合う。目が合う。服が体に合う。好みに合う。割に合わない仕事。 駅で落ち合う。/会う── 客と会う時刻。人に会いに行く。/ 遭う── 災難に遭う。にわか雨に遭う。
あふ〔合・会(會)・逢・遇・媾・闘(鬪)〕両者が当たり合う関係をいう語であるから、出会いから戦いまで、すべての関係が含まれ、語意の領域がすこぶる広い語である。/(ごう)は祝詞(のりと)を収める器の◆(さい※英語の「Ⅾ」を右に90度回転した字形)に蓋をする形。合意を意味する字である。/(かい)はもと會に作り、蓋のある食器の形。下部は甑(こしき)の形。蓋のある鼎(かなえ※三本足の器)をいう。会合の字に、会を用いるのは仮借(※同じ音の別の意味の字を借りてあてたもの)である。/(ほう)は夆(ほう)声。夆は峰の木に神が降りてくる形。そのような神異のものに逢うことを逢という。/(ぐう)は禺(ぐ)声。期せずして相逢うことを遇(※遭遇)という。/媾(※省略)(とう)の初文(※その漢字が生まれた当初の形)は鬥(とう)。左手に盾、右手に斧をもち格闘する形。ただ相逢うだけではなく、武器を執って決闘することをいう字である。

 また、藤井聡太八冠(九段)は将棋を「指(さ)す」、仲邑菫(なかむらすみれ)新女流棋聖は碁(囲碁)を「打(う)つ」という。「さす」「うつ」の異字同訓も、☆「異字同訓」の用例、■古語・同訓の漢字の原意と成立ちから見てみよう。

 ☆さす:差す―― 腰に刀を差す。かさを差す。差しつ差されつ。行司の差し違え。抜き差し ならぬ。差し支え。差し出す。/指す――目的地を指して進む。名指しをする。指し示す。/刺す――人を刺す。布を刺す。本塁で刺される。とげが刺さる。

さす〔刺・挿(插)〕先端の鋭く尖ったもので、ものを突き刺すことをいう。「(さ)す」と同根の語。「刺す」は人を刺殺するときに用いる。/(し)は朿(し)声。朿は先端の鋭い木を、地に刺して立てる形。これで刺殺することをいう。/(そう)はもと插に作り、臿(そう)声。臿はすき(※土を起す農具)。土中にものを植え込むことをいう。/国語の「さす」には、「さし寄る」「さし向かふ」のような軽い接頭辞のほか、突き刺す、髪に挿す、木を挿し立てる、竿を操りさす、小網(さで)さし渡す、地を占めてさす(中略)など、その用義の多い語である。これらの字に対応するものとして刺・挿・射・差・指などの字がある。他の同訓異字の例と同じように、「さす」という語がそれぞれの字に適当に配されて、そのことによってその語義が具体化され、明確化されてゆくということもあったであろう。
うつ:打つ――くぎを打つ。碁を打つ。電報を打つ。心を打つ話。打ち消す。/討つ――賊を討つ。義士の討ち入り。相手を討ち取る。/撃つ――鉄砲を撃つ。いのししを猟銃で撃つ。
うつ〔打・撃(擊)〕ある一点を勢いよくうつこと。手でうち、あるいは道具でたたくことをいう。手の動作であるから、その作用に関して接頭語として用いることもあり、意味領域の広い語である。類義語「たたく」はその擬声語を動詞形としたもの。連続してものを「うつ」意。「うつ」はうちつける意で、うちつけるように投げることを「撃つ」という。/(だ)は釘をうつ字。丁(てい)は打・釘の象形。/(げき)は嚢(ふくろ)の中にあるものを外からたたく意の字。たとえば穀を中に入れて、脱穀するような動作をいう。連続して強く打つことであるから、戦闘行為をいう字に用い、打撃のように連用する。

 とここまでは、少々お堅いトピック(話題)をとり上げてきたが、ここからはぐっとくだけて、インターネット検索などで見つけた「同音異義語」と「異字同訓」の〈ことばあそび〉をたのしんでみよう。

 ▲同音異義語・異字同訓で「ダジャレあそび」
電話にで(んわ。/校長先生絶好調。/会場を凍らすコーラス。/あかん、しろっ!/中年ちゅうねんトイレに行っといれ。/ねこ(猫) がねこ(寝込)む。/ブドウ(葡萄)一粒(ひとつぶ)どう?/俺オレンジ、君キミドリ。/下駄がに(逃)げた。/貴社記者汽車帰社した。/教会にいくのは今日(きょう)かい?/飛行機の副操縦士服装重視。/海老の血液型はAB型/アルミ缶の上にあるみかん

 ▲同音異義語・異字同訓を「書き分ける」
かつお節から出るのは「出汁だし)」・お祭りに出るのは「山車」/洋服で大切なのは「生地きじ)」・新聞で大切なのは「記事」/釧路が美しいのは「湿原しつげん)」・政治家が見苦しいのは「失言」/奈良の特産品は「かき)」・広島の特産品は「牡蠣」/産婦人科といえば「安産あんざん)」・算盤といえば「暗算」/ピエロといえば赤い「はな)」・山茶花といえば赤い「」/疲労は「」とよくなる・アイディアは「練る」とよくなる。/このカッターは、はさみにった。よかったー。だからった
◎一口メモ 「出汁(だし)」は素材の煮出(に・だし)汁(じる)に由来し、「山車(だし)」は屋台の鉾から竹籠の編み残しが「垂れた」部分を「出(」と呼んだのが始まりだという。

 ▲同音異義語・異字同訓で「謎かけ」
牛丼」とかけて「」ととく。その心はどちらも「なみ並み・波)」があります。/「バレンタイン」とかけて「重量挙げ」ととく。その心はどちらも「もて持てない人」はダメです。/「スープ」とかけて「いい夢」ととく。その心はどちらも「さめて冷めて・覚めて)ほしく」ありません。/「寿司」とかけて「すごろく」ととく。その心はどちらも「最後はあがり(お茶・ゴール)」でしょう。/「コシヒカリ」とかけて「マエストロ(名指揮者)」ととく。その心はどちらも「たくと炊くと・タクト)光ります」/「マラソン」とかけて「」ととく。その心はどちらも「ばんそう伴走・伴奏)」もあれば、「かんそう完走・間奏)」もあります。/「ボクシング」とかけて「公営ギャンブル」ととく。その心はどちらも「手は出しても足が出てはいけません」/「陸上部」とかけて「引っ越し屋さん」ととく。その心はどちらも「トラックで走り回ります」/「カラオケ」とかけて「図書館」ととく。その心はどちらも「どんどんかし歌詞・貸し出します」/「電話」とかけて「ボタン」ととく。その心はどちらも「かけ違いもある」でしょう。/「茶道」とかけて「占い」ととく。その心はどちらも「せいざ正座・星座)」が欠かせません。/「川柳」とかけて「午後五時」ととく。その心はどちらも「じゅうしちじ十七字・十七時)」です。/「」とかけて「お腹(なか)」ととく。その心はどちらも「歩くと減る」でしょう。/「お金」とかけて「ハサミ」ととく。その心はどちらも「ちょきん」/「卓球」とかけて「正解」ととく。その心はどちらも「ピンポーン!

そろそろ、お後がよろしいようで! 次回のコラムまでごきげんよう。

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう)

 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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