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とある市場の天然ゴム先物 28

【2021年振り返り①】天然ゴム先物・出来事編

連載 2021-12-07

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 2021年もあっという間にあと一ヶ月になってしまいました。2020年10月から始めた本連載も今回で第28回を数え、だいぶネタ切れ感が出てきているところです。

 そこで今回と次回で、少し力を抜いた形で2021年の天然ゴム先物市場で起こった出来事や市場動向などを振り返ってみたいと思います(新年からは新たな気分で新ネタを取り扱いたいと思います)。

 まず今回は「こんな出来事がありました」編となります。

①天然ゴム先物「6→12限月制」への変更

 天然ゴム先物について、2021年で制度上の最も大きな出来事は、9月21日に限月数(取引銘柄数)を「6限月」から「12限月」に変更したことです。

 こちらについては、第20回で制度変更のねらいを、第23回で変更直後の市場動向をご紹介しました。

 この制度変更の背景は、中国天然ゴム先物市場との裁定取引機会を拡大させたいという投資家からのニーズに応えるものでした。一方で、過去に何度か限月制を変更した歴史があり、あまり上手くいかず結局元の制度に戻すことになったという教訓があるということもお伝えしたところです。

 特に投資家の方々からは、「どの限月が取引の中心になるか分からなくなるのではないか」、「より期先に取引の中心が移ってしまうのではないか」、結果として「取引が分散することにより市場流動性が分散するのではないか」とのご指摘も受けてきました。

 そのため大阪取引所では、制度変更後の9月24日に、改めて「ゴム(RSS3、TSR20)先物取引におけるマーケットメイカーによる流動性提示の対象限月について」というアナウンスをウェブサイトで公表し、改めて「マーケットメイカーが流動性を提示している銘柄は制度変更後でも変わっていない」旨を強調するなどいたしました。

 さて、この制度変更の効果について、第23回が掲載された9月末の時点では、「追加された限月(第7~12限月)では第12限月を除いてあまり取引がない」という状況でした。ここから2ヶ月程度経過していますので、情況がどう変わったか見てみましょう。

12限月制への「変更直後」と「約2カ月後」のRSS3先物の取引高、取組高

出所:JPXより筆者作成

 直近では、追加となった限月でもちょこちょこと取引があり、また取組高(建玉残高)も多くはないものの全限月にあることが分かります。

 こちらより、「期先限月に取引高や取組高が分散してしまうのでは」という当初懸念されていたリスクは、今のところ顕在化していないと評価できるでしょう。

 その一方で、10月よりRSS3先物の取組高が急減しており、足元では10,000枚を割り込んでしまっています。現状を見る限り、12限月化とは別の要因があるのではないかと認識しているものの、このあたりについては次回に少し詳しく分析してみます。

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