とある市場の天然ゴム先物 25
RSS3先物の対象となる天然ゴムの商品スペックを見てみる
連載 2021-10-26
大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介
第11回では天然ゴム先物取引の対象となる天然ゴムについて、第16回ではTSR20先物の受渡対象となる承認工場について取り上げました。
今回は、取引開始から70年近い歴史を持ち、大阪取引所の主力商品の一つでもあるRSS3先物について、その対象となる天然ゴムの商品スペックをもう少し掘り下げて見てみることにします。
RSS3先物 受渡供用品の要件
大阪取引所の天然ゴム先物では、取引最終日までポジションを持っている場合、売り手が現物の天然ゴムを用意して、買い手に渡すことによって最終決済をすることになります。これを「現物受渡し」と言います。
このとき、売り手が渡す天然ゴムはどのようなものでもよい、という訳ではなく、「こういったスペックの天然ゴムを渡してくださいね」というものが定められており、このスペックの要件を満たしている天然ゴムを「受渡供用品」と呼びます。
このRSS3先物の受渡供用品となる天然ゴムの要件などについては、大阪取引所の規則等によって規定されています。そこで少し細かくなりますが、備忘メモの意味も兼ねて書き振りを見てみましょう。
まず大阪取引所の業務規程第7条の3の2号において、RSS3先物の標準品(先物取引の元となる商品)は「国際規格によるRSS3号に該当するもの」とされ、受渡供用品は、第36条の4で「各市場ごとに本所(大阪取引所)が定めるものとする」とされています。
この受渡供用品につき、「本所が定め」ているのは業務規程施行規則第32条2号aとなり、そこでは「国際規格によるRSS3号及び同4号のうち本所(大阪取引所)が定める要件を満たすもの」と書かれています。
この「本所が定める要件」の詳細については、商品先物取引に係る受渡決済関係事務処理要領に記載されていまして、まずIV.1.(1)①において、受渡供用品は「国際規格によるRSS3号及び同4号とし、業務規程施行規則第32条2号aの規定に基づきOSEが定めるRSS3号に対する同4号の格差は1キログラム当たり3.0 円下げとする」と表現されており、加えて受渡しに使うことのできる期限や重量、包装についてなどが細かく規定されています。
ただし、ここまででは「国際規格は具体的に何を意味しているか?」は書かれておりません。
こちらについては、同事務処理要領の「参考11 受渡品の検品方法」において、RSS3の受渡供用品の検査時における品質及び外装の判定は、「天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準(International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grades、通称「グリーンブック」)」を基準とし、日本ゴムトレーディング協会が定める「シッパー及びパッキングハウスの登録制度」に基づき行うものとされています。
受渡供用品は実際の受渡しまでに検品または検量を行い、検査証明書を取得する必要がありますが、この(JSCCの)検品時において求められる品質基準が「グリーンブック準拠」、業者の基準が「登録制度で登録された業者が取り扱うもの」となっており、これがRSS3先物の受渡供用品となる天然ゴムの実質的な基準となっています。
グリーンブック制定の経緯などについては第11回で詳しくまとめていますが、このグリーンブック内において、RSSについては「第2章 天然ゴムの国際品種および等級明細」、「第5章 天然ゴム包装規格」などで規定されています。
ところでここからは余談となりますが、RSSはその製造過程において、シート状で乾燥したゴムを重ね合わせて約 50cm角の立方体にプレス成形し、外側はダスティング処理(粉打ち)をされます。そしてこの1塊の単位のことを「ベール」と呼びます。
ベール単位で倉庫に保管されているRSS
出所:日本取引所グループ
グリーンブックの「第5章 天然ゴム包装規格」のSection1 (b)において、RSSの包装単位である1ベールあたりの重さは最低101.7kg、最大113.5kgであることが定められており、もし買い手の契約書で明示されている場合はそれ以下の重量も認められる、という記載になっています。
昨今よく議論になっているのが、このRSSのベールの重さです。TSRなどでは、スモールベールと呼ばれる、重量が約三分の一のサイズが一般的であるところ、RSSはまだ100kg超のベールであることが多く、これだけの重量は運送や保管の際にリスクがあることから、改善を求める声が出てきています。
ちなみに先ほど見たように、大阪取引所のRSS3先物は国際規格に準拠していますので、受渡供用品は100kg超のベール単位が前提となっています。
もしスモールベールをRSS3先物の受渡供用品の要件として入れる場合、グリーンブックの改訂を働きかけるか、何らかの形でスモールベールの基準を取引所の規則上などで手当てする必要が出てきます。
グリーンブックは1979年に更新されて以来、現在までアップデートされておらず、組織としての活動もほとんど止まっていますので、スモールベールをRSS3先物の受渡供用品とする場合には、規則上などで手当てを行う方が現実的かもしれません。
とはいえ、スモールベールを追加する場合、受渡供用品に重量の違うRSSが混在することになりますので、受渡しの際に先物の買い手にどのように割り振るのかといった問題や、またそもそもの先物価格や受渡単位をどのように調整するのか、といった論点も数多く出てきます。
したがって、RSSのスモールベール化を進めるにあたっては、投資家の需要や制度変更による実務上のインパクトなどを詳細に確認しながら、しっかりと検討していく必要があることになります。
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