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とある市場の天然ゴム先物 11

先物市場で取引される天然ゴムはどの国で生産されているの?

連載 2021-03-23

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 もし天然ゴム先物のポジションを取引最終日まで持っていたとすると、最終決済時に売方から買方へ実物の天然ゴムを渡す必要があります。これを「受渡し」といいますが、とはいえどんな天然ゴムを渡してもいい訳ではありません。今回は受渡しに関連する天然ゴムの種類や品質についてのお話です。

天然ゴムの国際規格

 天然ゴムの品質の規格の歴史を遡ると、戦前から米国ゴム工業会のRMA規格と、シンガポール商業会議所ゴム協会の規格が併存していました。当時、米国規格は「グリーンブック」、シンガポール規格は「ブルーブック」と呼ばれており、1952年に取引を開始した神戸と東京のゴム取引所はRMA規格を採用していました。

 戦後、特にシンガポールの包装業者による重量の水増しや等級詐欺などが横行したこともあり、1953年になると規格を統一する機運が高まり、1954年には国際ゴム品質包装会議(IRQPC: International Rubber Quality and Packing Conference)が開催され、1955年にIRQPCにおいて米国RMA規格をベースに国際規格を作ることが決議されました。

 こうして新たに作られた国際規格が「国際取引に使用される天然ゴム各種等級品の品種明細と包装規格 (Type Descriptions and Packing Specifications for Natural Rubber Grades Used in International Type)」であり、1957年2月1日に発効されました。この新たな国際規格は日本の両ゴム取引所の受渡供用品の基準としても採用されます。

 ただしこの国際規格は過渡期の産物であり、新たに定めた規格(INTタイプ)の他に、従来のRMAとシンガポールタイプもそのまま併存されていました。どのタイプを採用するかは各団体に一任され、日本のゴム取引所は全タイプを承認することとなります。

 その後1960年にRMA・シンガポールタイプを排除し、新規格に統一することが決定され、新たに「天然ゴム各種等級品の国際品質包装標準(International Standards of Quality and Packing for Natural Rubber Grades)」が1962年7月に発効します。この新規格は表紙の色から改めて「グリーンブック(The Green Book)」と呼ばれることになります。

 このグリーンブックは1969年に改訂され、その後も更新の協議が進められましたが、品質基準について産地国、消費国の意見調整が難航し、1969年版のリプリントという形で1979年に更新されて以来、現在までアップデートされていません。

グリーンブック(1969年版、1979年リプリント)

出所:The Rubber Manufacturers Association, Inc.

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