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とある市場の天然ゴム先物 27

タイに上場する日本の天然ゴム先物【Japanese Rubber Futures】

連載 2021-11-24

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 日本の天然ゴム先物(RSS3、TSR20)はもちろん日本の市場に上場していますが、実はタイにも日本の天然ゴム先物が上場していることをご存知でしょうか。

 その名を「Japanese Rubber Futures」と言いますが、今回はこのJapanese Rubber Futuresの上場の経緯や市場動向などを簡単にご紹介します。

タイの天然ゴム先物取引の沿革

 タイは世界最大の天然ゴム生産国であり、ゴム取引の長い歴史を持っています。タイの天然ゴムの生産・輸出業者(シッパー)は、以前より日本やシンガポールといった輸出先の取引所で取引をされている天然ゴム先物を使って価格変動リスクのヘッジなどの売買をしていました。

 しかし、タイ国内にはこうした天然ゴムの先物市場がなかったことから、タイの生産者・消費者両方の先物取引需要の獲得を目指して、1999年にタイ政府は農産品先物取引法(Agricultural Futures Trading Act B.E. 2542 (1999))を施行します。そしてこの法律に基づき、タイ政府の出資によりタイ農業商品先物取引所(AFET: The Agricultural Futures Exchange of Thailand)が設立されることとなります。

 その後、2001年9月に最初のタイ農業商品先物取引所の取締役が指名され、2004 年5月に第一号の先物商品としてRSS3先物が上場し、さらに2005 年9月にTSR20 (STR20) 先物、2006年3月にラテックス先物の取引が開始されることとなります。これらは現在の日本の株式や先物と同様のザラバ取引で、通貨はタイバーツ建てでした。

 しかしながら、この新しい天然ゴム先物市場へのタイのシッパーの参加は限定的であり、その後長期にわたり取引が低迷することになります。

 このタイ農業商品先物取引所では、天然ゴムのほかに2004年8月にはコメ先物、2005年3月にはタピオカ先物の取引を開始しますが、これらの取引も伸び悩むことになります。

 その後、取引低迷が続いたことで経営の継続が難しくなり、タイ農業商品先物取引所は2016年11月、タイ証券取引所(Stock Exchange of Thailand, SET)傘下で、株価指数先物等を上場しているタイ先物取引所(Thailand Futures Exchange)に吸収合併されることとなります。

 この吸収合併直前の2016年5月、タイ先物取引所に最初の農産物先物であるRSS3先物が、2016年6月にはRSS3D先物が上場することで、タイ農業商品先物取引所の天然ゴム先物は引き継がれる形となりました。

 なお日本との関係では、2016年6月にタイ先物取引所と、当時天然ゴム先物を上場していた東京商品取引所(TOCOM、現在は日本取引所グループ傘下)との間で、両取引所間の協力関係強化に関する覚書が締結されています。これはタイと日本の天然ゴム産業が長年の協力関係にあり、かつ日本で取引をされている天然ゴム先物の対象がタイ産であることが背景の一つでした。

Japanese Rubber Futures上場の経緯

 2016年にタイ先物取引所に移管されて仕切り直しとなった天然ゴム先物ですが、RSS3先物、RSS3D先物ともに取引は低迷します。

 なお余談ですが、タイ先物取引所のRSS3先物とRSS3D先物の違いは、RSS3先物の受渡供用品に「取引所の清算機関であるThailand Clearing House(TCH)の承認した生産者が生産したRSS3」という条件があり、かつ受渡しが清算機関(TCH)を通じて行われるというものになります。

タイ先物取引所に移管後のRSS3先物とRSS3D先物の取引動向

出所:TFEXより筆者作成

 ところでタイで天然ゴム先物の利用が進まない理由の一つは、輸出業者であるシッパーが日本やシンガポールの天然ゴム先物を使ってきたことから、あえて流動性の低いタイの天然ゴム先物市場を利用する必要がない、というものでした。

 特に日本のRSS3先物は、国内外の多くのゴム業界関係者及び投資家に利用されており、海外にオープンなRSS3先物市場という点では最も規模や流動性が大きく、RSS3の国際的な指標価格の一つとして広く認知されています。

 そこでタイ先物取引所は、タイ独自のRSS3先物に固執せず、既に国際的な認知の高い日本のRSS3先物市場を活用した商品設計とすることで市場の活性化を目指すようになります。

 元々タイと日本は天然ゴム市場の拡大のために長年相互に協力してきた関係であり、また日本の取引所もタイ先物取引所と友好な関係を続けてきました。そうした背景から、2019年にタイ側から当時の東京商品取引所が提案を受け、新商品を共同で設計することとなります。

 その結果として、2020年にタイ先物取引所における新たな天然ゴム先物商品の上場に関する合意書を両取引所間で締結し、2020年11月30日、日本のRSS3先物の価格を参照した新商品「Japanese Rubber Futures」がタイ先物取引所に上場することになりました。

 このJapanese Rubber Futuresの上場は日本、タイ両国の長年の協力関係の象徴であり、タイの個人投資家や金融系プレイヤー等にゴム先物の新たな投資機会を提供できることになったほか、将来的には市場間アービトラージ取引の促進によって両市場の相乗的な発展が期待されているところです。

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