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とある市場の天然ゴム先物 30

天然ゴム先物の取引時間の変遷を追う!

連載 2022-02-08

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 2022年に入ってあっという間に一ヶ月が経過してしまいました。光陰矢の如し、時間が過ぎるのは早いものだということで、今回は天然ゴム先物市場の「取引時間」について、変遷やその当時の背景などを見てみましょう。

現在の天然ゴム先物の取引時間

 大阪取引所ではRSS3とTSR20の2種類の天然ゴム先物が取引されていますが、その立会取引時間は「日中取引で9:00~15:15、夜間取引(翌営業日の取引扱い)で16:30~19:00」となっています。

 これが例えば日経225先物などの指数先物や、金や白金といった商品先物では、「日中取引が8:45~15:15、夜間取引が16:30~翌6:00」となっていますので、特に夜間取引の長さが大きな違いとなっています。このあたりの背景は後ほどご紹介いたします。

JPXデリバティブ商品の取引時間(2022年2月7日現在)

出所:JPX

ゴム先物取引所設立からの変遷

 日本の天然ゴム先物市場は1952年に設立されましたが、当初の取引はもちろんシステムなどではなく、立会場に人が実際に集まって複数回の板寄せを行う方法でした。

東京ゴム取引所における板寄せ取引の模様

出所:JPX

 この板寄せによる取引は「単一約定値段による競売買」とも言われ、一定時刻に開始される各場節の売買立会において、売り手と買い手が注文を申し込み、最も多数の売買取引を成立させることのできる単一値段を決定し、条件に合致した全ての注文を単一の値段で約定させるというものです。

 この取引方法は厳密には「板寄せ法」と「板寄せザラバ折衷法」の2つがあり、両者の違いは、板寄せ法では取引所の会員が高台にいる取引所職員に対して売りまたは買いの枚数を申し出るものですが、板寄せザラバ折衷法では取引所の会員が他会員との間で直接売買を行い、その取引状況をもとに単一の約定値段が決定されるというものになります。

 一般的に板寄せザラバ折衷法の方が市場に活気が出ると言われ、東京ゴム取引所では1952年の開設当初は板寄せ法でしたが、翌年10月より板寄せザラバ折衷法に切り替えられました。ただしその後、1973年6月より再び板寄せ法に変更されています。

 なお取引時間(板寄せ時間)ですが、設立以降に何度か変更されています。例えば1953年3月には後場に第3節(15:30)が導入されましたが、これは当時シンガポールの前引相場が15:00頃に入電していたことから、その値段を反映させるための取引時間を用意したという背景があったそうです。

開所以降の東京ゴム取引所の取引時間変遷

出所:「東京ゴム取引所20年史」より筆者作成

 なお取引所会員は立会場において相手方を求めて売買を行わなければなりませんでしたが、商品取引員(会員のうち売買の委託を受けることにつき通産大臣の許可を受けた者)については、市場で売買が成立した後の一定時間内の間、委託注文について自己が相手方となって売買を成立させる「バイカイ付出し」が認められていました。ただしこのバイカイ付出しは、商品取引員と委託顧客間の利益相反という点で後年問題視されていくことにもなります。

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