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連載「つたえること・つたわるもの」(130)

「知らずに使ってる? 英略語」、こんなにある、ある。

連載 2022-02-08

出版ジャーナリスト 原山建郎

 先月(1月22日)、『NIKKEIプラス1』にあった特集、「英略語 知らずに使ってる?」が面白かった。

 ニュースや日常生活でよく耳にする英略語のクイズ(3択問題)を1000人超の同紙読者に出題し、正答率が低かったものから順にランキングしたところ、ワースト3の第1位は「PFI(公共施設の整備に民間の資金や技術力、経営能力を活用する手法)のIは? ①Investment(出資)、②Initiative(主導権)、③Introduction(導入)」、第2位は「URL(ネットワーク上の情報を入手するときに必要な場所と入手方法を示す文字列)のLは? ①Locator(探知器)、②Label(ラベル)、③List(リスト)」、第3位は「PR(組織とその存続を左右する公衆との間に、相互の利益をもたらす良好な関係性を構築し、維持するマネジメント機能)のPは? ①Public(公の)、②Personal(個人の)、③Promotion(販売促進)」であったという。

 これら長々とした日本語の説明文を簡潔に伝えるには、英略語のほうがたしかに手っ取り早い。しかし、その英略語の意味をちゃんと理解して使っているかと問われれば、必ずしもそうだとは言い切れない。

 同紙の記事によると、それぞれの正答は「PFIのIは、民間主導の意味合いから②Initiative(主導権):Private Finance Initiative(民間資金主導による公共施設整備)」、「URLのLは、情報源の住所をインターネットで検索するための①Locator(探知器):Uniform Resource Locator(情報資源分類・探知するための文字列表示方式)」、「PRのPは、企業や団体などが良好な関係性を構築したい公衆、つまり①Public(公の):Public Relations」だが、何となくわかったつもりで使っているのが、これらの英略語ではなかろうか。ちなみに、正式英語名()内の日本語訳は、原山流の直訳ふう私訳(迷訳?)である。

 もともと、英略語のPRは「組織(会社や団体など)と公衆(一般市民)の良好な関係性の構築(Relations)」を意味する言葉だが、わが国では会社や団体などの商品やサービスを利用する公衆(Public)をターゲット(対象)に行われる「広告(広報・認知)・宣伝(販売促進)活動」の意味で使われている。それと同じように、大学生の就活(個別面接)シーンでは、「自分の長所を売り込む1分間スピーチ」を「自己PR」と表現することが多い。この就活用語のニュアンスとしては、「自己PR」を「広告(就活生=自分を採用企業に認知してもらう)・宣伝(就活生=自分という商品の購入・サービスの利用を促す)」ために使っており、英略語クイズの3択問題にあった③Promotion(販売促進)を意味する「和製英略語」となってしまった。

 現在、私は大学のオンライン講座で「エントリーシート対策講座」を担当しているが、学生には「自己PR」ではなく、「自己アピール(self appeal:長所を売り込む)」や「プレゼン(presentation:自分をひと言で表現する)」などと説明している。ちなみに、英語では、「Talk about my qualities(長所を売り込む)」、「about myself(私について)」、「my summary(私をひと言で表現する)」のようになるらしい。

 やはり、同紙でワースト3の第4位にランクされた「病院のICUのCは? ①Concentrate(集中する)、②Care(手当てする)、③Clean(清潔な)」では、24時間態勢で患者を見守る病室の意味から、①Concentrate(集中する)を選びそうだが、正答は②Care(手当て):Intensive Care Unit(集中治療室)」である。

 2019年末に、中国の湖北省武漢から始まった新型コロナウイルスの世界的感染拡大は、3年目に入ったいまも、従来のデルタ株より感染力の強いオミクロン株が猛威を奮っている。この新型コロナウイルスの「COVID19」という名称も、コロナウイルス(Coronavirus)と病気(Disease)の短縮形に、感染が報告され始めた2019年を組み合わせた英略語である。

 ☆最近、ウクライナをめぐるロシアと欧米諸国との対立の火種になっているNATOは1949年に北米とヨーロッパ30カ国による政府間軍事同盟(集団防衛システム)である「the North Atlantic Treaty Organization(北大西洋条約機構)」のことである。一方のロシアには、1992年に旧ソ連の構成共和国6カ国との間で調印(2022年現在、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国)した「集団安全保障条約」であるCSTOCollective Security Treaty Organization)がある。

 ☆このところ北朝鮮が日本海に向けてくり返す「飛翔体」発射実験では、アメリカ本土まで届く射程距離6400キロメートル以上のICBMInterContinental Ballistic Missile:大陸間弾道弾)では、「ballistic(弾道)」の語源が「古代の投石器」であるという。ちなみに、射程距離3000~5500キロメートルのIRBMIntermediate-Range Ballistic Missile)は、「InterContinental(大陸をまたぐ)」ではなく「Intermediate-range(中間領域)」であるが、もちろんわが国はその射程距離の内側にある。

 ☆現在、アジア最終予選が行われている「FIFAワールドカップ」の主催団体、「FIFA(国際サッカー連盟)」は、フランス語の正式名称「Fédération Internationale de Football Association」の仏略語だが、その英語訳(表記)は「the Federation of International Association Football」である。

 身近な略英語では、am(午前)、pm(午後)がある。このam/pmはラテン語の「ante/post meridiem」に由来し、ante/post/meridiemはそれぞれ英語のbefore(~の前)/after(~の後)/midday(正午)をあらわす。したがって、正午の前(am)と後(pm)の時間をあらわす言葉である。

 炭素の結晶(黒鉛)と粘土を練り合わせて固めた芯をもつ(黒)鉛筆の硬さを表示する略英語のうち、Hは「Hard(芯の部分が硬く、紙に芯がつきづらいので薄く書ける。Hから10Hまである)、Bは「Black(芯の部分が軟らかく、たくさん芯が紙につくので濃く書ける。Bから10Bまである)」、HBは「Hard Black(HとBの中間の硬度・濃度をもつ最も一般的な芯)」、 Fは「Firm(堅く引き締まったという意味で、HとHBの中間の硬度・濃度をもつ)」をあらわす略英語である。

 英略語を調べた「おまけ」に、ジョークのような例を見つけたので、そのいくつかを紹介しよう。

 ☆交通カードのSUICAなどに使われるICカード( Integrated Circuit card)は、「情報(データ)の記録や演算をするために集積回路 (IC) を組み込んだカード」のことだが、SNSSocial Networking Service)上では、「IC」のCをseeに読み替えて「I see(わかりました)」、あるいは「OIC(Oh, I See:へー、なるほど)のように用いるそうだ。代表的なSNSには、インスタグラム(Instagram)、ツイッター(Twitter)、フェイスブック(Facebook)などがあるが、英語話者はこれらを日本語話者がよく使うソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ではなく、ソーシャル・メディア(Social Media)と呼ぶそうだ。ソーシャル・メディアのほうが、ソーシャル・ネットワーキング・サービスより具体的でわかりやすい。

 ☆やはり、SNS上で使われる英略語(?)の数々。/☆「AFK」は「Away From Keyboard(少し席を外します)」/☆「asap」は「as soon as possible(できるだけ早く)」/☆「B4」は「Before(~の前に)」/「m2」は、mをmeに、2をtooに読み替えて「me, too(私もよ)/☆「IMO」は「In My Opinion(私の意見では」/☆「OMG」は「Oh,My God(オーマイガッド=なんてこった!)」/☆「qt」は「cute(かわいい)」/☆「W8」は「wait(待って)」/☆「UW」は「You are Welcome(どういたしまして)」

 ところで、竹下登元首相の孫でミュージシャン、DAIGOが日本語の単語やフレーズをアルファベットに略して、幾通りにも表現した言葉を集めた『DAI語辞典』(DAIGO著、ぴあムック、2015年)が面白い。
☆DGDG(DAIGO大誤算・DAIGO大号泣)/☆DKB(大好物)/☆GGDD(言語道断)/☆DD(努力大事)/☆JSSK(上昇志向)/☆GIGS(郷に入っては郷に従え)

 最後に、DAIGOの「元気が出る」略語を3つ唱えて、「COVID19」の一日も早い収束を祈りたい。
☆JS(人生って素晴らしい)/☆MKS(負ける気がしない)/☆GGYK=グイグイヨシコイ

【プロフィール】
 原山 建郎(はらやま たつろう)
 出版ジャーナリスト・武蔵野大学仏教文化研究所研究員・日本東方医学会学術委員

 1946年長野県生まれ。1968年早稲田大学第一商学部卒業後、㈱主婦の友社入社。『主婦の友』、『アイ』、『わたしの健康』等の雑誌記者としてキャリアを積み、1984~1990年まで『わたしの健康』(現在は『健康』)編集長。1996~1999年まで取締役(編集・制作担当)。2003年よりフリー・ジャーナリストとして、本格的な執筆・講演および出版プロデュース活動に入る。

 2016年3月まで、武蔵野大学文学部非常勤講師、文教大学情報学部非常勤講師。専門分野はコミュニケーション論、和語でとらえる仏教的身体論など。

 おもな著書に『からだのメッセージを聴く』(集英社文庫・2001年)、『「米百俵」の精神(こころ)』(主婦の友社・2001年)、『身心やわらか健康法』(光文社カッパブックス・2002年)、『最新・最強のサプリメント大事典』(昭文社・2004年)などがある。

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