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とある市場の天然ゴム先物 27

タイに上場する日本の天然ゴム先物【Japanese Rubber Futures】

連載 2021-11-24

Japanese Rubber Futuresの市場動向

 それではここからはJRFの市場動向を簡単にご紹介します。まずはJRFの取引状況を見てみましょう。

Japanese Rubber Futuresの取引状況(2021年11月22日 日本時間18:09時点)

出所:TFEX

 こちらの取引状況を見てみますと、取引最終日が近い第1限月を除き、どの限月にも売り買いの気配がしっかりと出ていることが分かります。これはタイ先物取引所がマーケットメイカー制度を導入しており、Japanese Rubber Futuresにも複数社のマーケットメイカーが継続的に売り買い両方の気配を提示しているからとなります。

 次にJapanese Rubber Futuresの取引高、建玉残高を見てみましょう。

Japanese Rubber Futuresの取引高、建玉残高推移

出所:JPX、TFEXより筆者作成

 日本のRSS3先物と比較するとまだまだ流動性は少ないですが、2021年に入りタイ先物取引所の他の天然ゴム先物(RSS3、RSS3D)の取引高、建玉残高はゼロが続いていますので、Japanese Rubber Futuresはタイで唯一取引のある天然ゴム先物となります。

 現在の取引はマーケットメイカー同士の売買であることが多い模様ですが、流動性が増えていくことにより、日本市場との裁定取引を行うようなプレイヤーや個人投資家なども増えていくと期待されているところです。

 最後に先物価格の推移を見てみましょう。

 前述したとおり、Japanese Rubber Futures(第1限月)の取引最終日の最終清算値段が日本のRSS3先物の最終清算得段と一致するように設計されていますが、逆に言えば取引最終日までの取引、清算値段はタイ市場の動向によって決まります。

 これはつまり、たとえばタイ市場における需給や独自要因により、時に日本のRSS3先物と値段の乖離が生じることもあるということになります。

OSE RSS3先物とTFEX JRFの清算値段、スプレッド推移(第6限月)

出所:JPX、TFEXより筆者作成

 こちらのグラフは両先物の第6限月の値動きの推移となりますが、場合によっては10円から20円といった大きな乖離が生じていることが分かります。こうした値段の歪みは裁定取引で利益を出すチャンスですので、そうした投資家の参入が望まれているところです。

 さて、今回はタイに上場するJapanese Rubber Futuresをご紹介しました。

 世界の天然ゴム先物で最終清算値段に他市場の値段を使うものはなく、Japanese Rubber Futuresは非常にユニークな商品であるといえます。

 天然ゴムの需要という観点では、TSRが消費の中心となったことでRSSへの需要が減少してきており、その大きな流れの下で日本のRSS3先物の市場規模も縮小を続けています。

 Japanese Rubber Futuresの取引規模はまだまだ小さいですが、株価指数先物を含めてタイのデリバティブ市場は拡大を続けており、今後天然ゴム先物市場が大きく成長するポテンシャルがあると思われます。

 今回のJapanese Rubber Futuresのケースのように、成長ポテンシャルの高い市場との協力関係を築き、多くの投資家に新たな投資機会を提供していくことで日本の天然ゴム先物市場を活性化させ、その結果として世界の天然ゴム先物市場の発展に繋げていきたいと考えているところです。

※次回の更新は2021年12月7日(火)頃の予定です。

【もっと知りたい方に!】
日本取引所グループ「大阪取引所とタイ先物取引所が天然ゴム商品上場に関する合意書締結~タイ先物取引所でJapanese Rubber Futures上場へ~」
TFEX “About TFEX”
TFEX “Japanese Rubber Futures”
TOCOM「ゴム取引の基礎知識」

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