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とある市場の天然ゴム先物 11

先物市場で取引される天然ゴムはどの国で生産されているの?

連載 2021-03-23

取引所による品質検査

 RSS先物の受渡し対象(「受渡供用品」といいます)となるゴムの品質検査について、取引開始当初は受方(RSS先物の買方の商品仲買人)が受渡しの際に検品をすることとなっていました。

 ところが検品を出来ない仲買人が増えたため、1958年に取引所に検査を請求できることとし、取引所に検査証明書を発行してもらうことで受方による検品が免除されるという制度が導入されます。この制度は現在でも生きており、取引所による検品を行っている機関を「受渡・品質委員会」といいます。

受渡・品質委員会で使用されている検査台

神戸ゴム取引所より引き継いだ、受渡・品質委員会で現在でも活躍している検査台。下から電灯の光を照らすことで天然ゴムに含まれる不純物などを見つけやすくなる。
出所:日本取引所グループ


 ところでRSS3先物の受渡供用品ですが、取引所規則で「国際規格(グリーンブック)によるRSS3号に該当するもの」と定義されていますが、特段産地が限定されている訳ではありません。

 一方、受渡・品質委員会による検品は日本ゴムトレーディング協会の「シッパー及びパッキングハウスの登録制度」に基づくとされており、この制度はタイの輸入ゴムの品質管理を目的として制定された経緯があるため、現在でもタイのシッパー及びパッキングハウスのみが登録されています。そのため、現在取引所の受渡供用品となっているRSSの大部分が「タイ産」となっています。

 また天然ゴムは経年劣化することから、受渡しが可能なRSSには期限が定められています。1952年の取引開始時には輸入通関後2年以内とされていましたが、長期保管により生ゴムの変形やよごれ等の損傷をもたらしていたため、1977年には通関後1年6ヶ月、1993年には通関後1年に変更されています。

 なお2018年に取引を開始されたTSR20先物については、「取引所が承認したTSR工場によって生産されたタイ産TSR20であること」、「タイの公的機関により品質検査を行うことが指定された承認工場の品質検査証明書が添付されていること」、「タイの公的機関により定められた最新のTSRの品質規格を満たしていること」といった受渡供用品の基準があります。

 TSRは「技術的格付けゴム」の名前のとおり、分析試験を行ってその測定結果から技術的規格に基づき格付けされるものであり、かつ受渡場所がタイ、マレーシアの港での船積みであることから、RSSのような受渡・品質委員会による検品は実施されていません。また産地もタイに限定されています。

 さて今回は先物市場で受渡しの対象となる天然ゴムの「品質」の観点でまとめてみました。次回では近年特に重要視されている「サステイナビリティ」の観点についてご紹介いたします!

※次回の更新は2021年4月6日(火)頃の予定です。

【参考資料】
Austin Coates “The Commerce in Rubber – The first 250 years”
Peter W.C. Tan “Singapore Rubber Trade – an Economic Heritage”
The Thai Rubber Association “60th Anniversary of Thai Rubber Association”
神戸ゴム取引所「46年史」
谷沢竜次「シンガポールゴムの思出」
TOCOM「ゴム取引の基礎知識」
東京ゴム取引所「20年史」
日本ゴム輸入協会「日本ゴム輸入協会記念誌 40年のあゆみ」
日本取引所グループ「商品先物取引に係る受渡決済関係事務処理要領」

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