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とある市場の天然ゴム先物 20

【6→12限月制】天然ゴム先物の制度変更のポイントを徹底解説!

連載 2021-08-11

市場流動性の分散を防ぐための施策

 これらを踏まえて今回の12限月制のケースに戻りますと、まずこの制度変更については「SHFEとの間の裁定取引機会を拡大させたい」という海外投資家から継続的に要望を受けてきました。

 一方で、他の投資家からは「どこが取引の中心になるか分からなくなるのではないか」、「より期先に取引の中心が移ってしまうのではないか」、結果として「取引が分散することにより市場流動性が分散するのではないか」との懸念も受けてきました。

 大阪取引所はこうした制度変更のメリット、デメリットについて様々な角度から検証し、今回、「適切な対応と投資家との密なコミュニケーションを行うことで、既存投資者の利便性を確保するとともに、投資機会の拡大を同時に目指すことができる」との判断に至りました。

 判断の背景には、特に取引減少が続く環境下において、日本の天然ゴム先物市場が枯れ果てる前に何とか市場を活性化させたい、そのためにはリスクを乗り越えてチャレンジをする必要がある、という想いがあります。

 とはいえ、もちろんそのままノーガードで臨むと過去の二の舞となる可能性があることはご承知のとおりです。

 そこで重要となるのが、「12限月に変更後、そもそも取引の中心となる限月をどう考えるか」、「市場流動性の分散を防ぐためにどのような措置を取るか」、また「投資家とのコミュニケーションをどのように行うか」という点です。

 まず「取引の中心となる限月」ですが、大阪取引所としてはRSS3先物、TSR20先物ともに、9月21日の12限月制の導入時において変更することは意図していません。

 これは特にRSS3先物について、1952年の取引開始以来、第6限月が取引の中心という慣習が続いているところ、こうした既存のエコシステムを人為的に変更するには今回の枠組みだけでは無理があるだろうと考えているためです。

 また「市場流動性の分散のリスク」については、現状の期先中心のエコシステムが歪な形で変わらぬよう、第5、第6限月が最も流動性が高くなるように手筈を整えます。

 具体的には、マーケットメイカーと呼ばれる投資家が常時、特定の限月に売りと買いの気配を提示しているのですが、この気配が提示される主要な限月をRSS3先物は「5番限および6番限」、TSR20先物は「3番限および4番限」として、現在の対象から変更しないものとします。

 これらのマーケットメイカーは、「特定の限月」に「特定の時間、範囲および数量の気配」を出し続けることでインセンティブを受け取る仕組みになっていますので、こうした条件を変えなければ、これらの注文は既存の取引の中心となる銘柄に集中することとなります。

 こうしたマーケットメイカー制度の設計および提示される気配により、「取引所として取引の中心限月の変更は意図していない」というシグナルが市場に伝わることを期待するとともに、今回の制度変更の意図や狙いについて、投資家の皆様にしっかりとお伝えしていくことが何よりも重要だと考えています。

 もちろん市場は生き物ですので、全体のエコシステムが少しずつ変化していくことにより、取引慣習が自然に変わっていくことも起こり得るでしょう。

 市場運営を預かる立場として、そうした変化の本質をしっかりと理解して対応していくためにも、「それが投資家の利便性向上に役に立っているか」という観点を常に持ち、様々なステークホルダー間のバランスを取りながら、適切な市場運営と制度設計に取り組んで参りたいと考えています。

※次回の更新は2021年8月24日(火)頃の予定です。

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