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連載「つたえること・つたわるもの」(95)

〈からだ〉によい汗・悪い汗、心地よい「快汗」をかく。

連載 2020-08-11

出版ジャーナリスト 原山建郎

 先週末(8月8日)、新しいタイプの遺伝子配列をもつ新型コロナウイルスが、6月中旬、以降全国に広がっていると国立感染症研究所の研究チームが報告した。最初は中国系統(武漢型)が、続いて欧州系統のウイルスによるクラスター(感染集団)が全国各地で発生し、5月下旬にいったん下火になったものの、6月中旬から東京を中心に新たなタイプの遺伝子配列のウイルスが突然出現し、現在、急速に増加している全国の陽性患者の多くが、新タイプに属することが分かった。

 ウイルスはヒトのからだ(細胞)の中に入り込んで、増殖・感染・増殖・感染を理論的には無限に繰り返す。ウイルスはできるだけ宿主(寄生先)を殺さず、多くの宿主に感染させることが、彼らにとっての理想的な生き残り戦略である。したがって、この新しいタイプ(仮に東京型と呼ぶことにしよう)の〈したたかな〉コロナウイルスが、諸外国の新規感染者数や重症者・死亡者数が少ないからといって、「まだ緊急事態宣言を発出する段階ではない」「お盆休みの帰省で県をまたぐ移動を一律に控えてくださいと言っているわけではない」とのんびり構えている場合ではない。

 また、大阪府の吉村洋文知事が先週、「うそのような本当の話」として「ポビドンヨードを含むうがい薬を使用して陽性者が減少している」との発言は、ドラッグストアの棚からうがい薬が売り切れる「経済効果(?)」をもたらしたが、そもそもポビドンヨードは外用(皮膚や口や鼻の粘膜など、からだの外側に塗って用いる)の消毒殺菌薬なので、希釈して(薄めて)も連用(続けて用いる)すると皮膚や粘膜に炎症を起こす。たとえは悪いが、風邪でもない人が風を予防する目的で風邪薬を飲み続ければ、かえって具合が悪くなるようなもので、今回は軽症者、中等症の感染者に「ポビドンヨードを含むうがい薬を使用したら、唾液に含まれるウイルスの量が減少した」臨床例レベルであり、その有効性について今後の研究・追試が待たれる。

 今回のコラムも、春学期に予定していた社会人向け健康講座の中から、「〈からだ〉によい汗・悪い汗」を紹介する。『生理学』(真島英信著、文光堂、1990年)の解説を参考にしながら、35℃を超える猛暑対策のひとつとして、コロナ禍を吹き飛ばす、心地よい「快汗」について考えてみよう。

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