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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導で5カ月ぶり高値

連載 2020-08-17


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=170円台前半まで急伸する展開になった。産地相場が、需要の回復と供給不安から底固く推移していることが好感されている。また、株価や原油相場が総じて底固く推移していることもポジティブ材料視されている。3月6日以来となる約5カ月ぶりの高値を更新した。上海ゴム先物相場は、中心限月の2021年1月限で1トン=1万2,000元台前半で小動きに終始している。

 産地相場は上昇傾向が続いている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月6日時点でUSSが前週比1.9%高の1キロ=44.15バーツ、RSSが同2.3%高の46.25バーツとなっている。集荷環境には特別に大きな変化は見られないが、需要環境の改善が進む中、需要と供給とのバランスが乱れ始めている。

 本来は需要環境が正常化に向かうプロセスと連動して、集荷量を増やす局面にある。しかし、実際には主要生産国で各種の供給障害が報告されており、短期的な需給ひっ迫感が強くなっている。

 インドネシアとマレーシアでは7月上旬の大規模な洪水被害発生後も、雨がちの天候が続いている。タイでは逆に干ばつ傾向が強く、土壌水分不足に対する警戒の声が強くなっている。ベトナムでは、再び新型コロナウイルスが猛威を奮っており、農産物の収穫や供給障害を報告する声が増え始めている。また、東南アジア全域で、労働者の出入国制限による労働力不足の問題が継続しており、供給不安が高まっている。

 8月中旬にかけては、このままさらに供給不安が強まるのか、一時的な供給不安に留まるのかが焦点になる。足元ではラニーニャ現象発生に近づいている可能性が高く、例年以上に気象環境に対しては注意が必要な状況になっている。

 一方、需要環境は緩やかな改善傾向を維持しているとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響が警戒されているが、各国ともに都市封鎖(ロックダウン)などの強力な対策を講じることには消極的であり、自動車・タイヤ販売店の閉鎖、工場の稼働停止といった動きはみられない。今後の感染状況次第でタイヤ需要環境は大きなダメージを受ける可能性を抱えているが、潜在的なリスクとの評価に留まっている。

 7月の各国製造業PMIは、中国は前月の50.9から51.1、米国は同52.6から54.2、欧州は同51.1から51.8まで、それぞれ6月から活動が上向いていることを示している。7~9月期は製造業セクター全体の緩やかな改善傾向が続くとみられ、タイヤ需要に関してもペースダウンの声も聞かれるが、改善トレンドは維持されやすい状況にある。

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