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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、高値波乱の展開に

連載 2024-02-26

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=285~305円のレンジで売買が交錯する展開になった。日経平均株価が過去最高値に迫る動き、1ドル=150円を超える円安・ドル高環境を背景に300円の節目を上抜き、2017年2月以来の高値を更新した。しかし、春節(旧正月)の連休明け後の上海ゴム相場が伸び悩んだこと、過熱感の強さから利食い売りを入れる動きも強く、290円台中盤まで軟化している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万3,500元台での取引になっている。春節前の2月8日の終値1万3,220元からは上振れしているが、春節中のJPXゴム相場の急伸地合を追認するような急伸地合にはなっていない。

 春節の中国観光消費支出がコロナ禍前を上回ったとの報告、中国政府が景気対策を打ち出すとの見方はポジティブ。一方、中国経済の減速懸念も根強く、大連鉄鉱石相場などが急落していることはネガティブ。結果的に春節前後で上海ゴム相場の値位置は若干切り上がるのみになっている。JPXゴム相場の急伸を明確に拒否することも追認することもなかった。

 2月のJPXゴム相場が急伸したことについては、日経平均株価の急伸と円安が最大の要因になっている。このため、株高・円安環境からの支援が維持されるか否かが注目されたが、日経平均株価は過去最高値更新を目前に上げ一服となっている。大きく値を崩しているわけではないが、株高主導の上昇地合に関しては一服した。

 ドル/円相場に関しても、1ドル=150円台では日本当局の円買い介入が行われるリスクが警戒され、円安・ドル高が一服している。この結果、為替要因でも積極的な売買は求められない環境になった。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、2月21日時点で1.6%高の1キロ=74.61バーツ。春節中はJPXゴム相場の上昇地合と連動して急伸していたが、春節後も値動きは鈍化したものの高値更新が続いた。

 ただし、引き続き産地集荷量には目立った混乱はみられない。ウインタリング(落葉期)に入っているが、集荷量は総じて安定している。乾季入りで徐々に集荷量は落ち込んでいく見通しだが、2月段階で供給リスクのプレミアムを織り込んでいく必要性は乏しかった。減産期に向かう季節要因を手掛りに、買い進むような動きはみられなかった。

 中東の地政学リスクを背景に原油相場が高値推移を続けていることはポジティブだが、原油相場主導の値動きは見送られている。あくまでも地政学リスクに基づく原油高であり、ゴム相場に対する影響は軽微と評価されている。

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