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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地天候不順で底固い

連載 2024-05-27

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=320円台をコアに底固い展開になった。東南アジアの天候不順を背景とした供給不安が強く、底固い展開になっている。5月21日には332.40円まで値上がりし、4月10日以来の高値を更新している。ただし、上海ゴム相場が伸び悩むと調整売りが上値を抑え、大きな値動きには発展しなかった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台後半まで値上がりし、上げ一服となっている。1万5,000元台を回復する場面もみられたが、同水準では戻り売り圧力も強かった。4月末の1万4,000元水準から急ピッチな値上がりが続いていたが、1万5,000元水準では抵抗を受けている。こうした動きと連動して、JPXゴム相場も330円台からさらに大きく値位置を切り上げるような動きは見送られた。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、5月23日時点で前週比1.7%高の1キロ=82.83バーツ。16日に80バーツ台を回復したが、その後も上昇地合が維持されている。東南アジアでは引き続き広範囲にわたる熱波が観測されている。異常気象「エルニーニョ現象」は収束しつつあるが、最高気温が40度近くに達している地域も多い。例年だと5月は乾季から雨期への移行で集荷量が回復する時期になるが、今年は逆に今年最低水準の集荷量に留まっている。高温で農産物の生産環境全体が悪化していることに加えて、長時間の農作業も困難な状態になっている。供給リスクをどこまで織り込むのかが問われる地合が続いている。

 一方、供給不安を織り込んだ際に通常みられる逆サヤ(期近高・期先安)化は引き続き見送られている。産地主導の上昇地合になっているが、消費地相場では期近限月にプレミアムを加算していくような動きはみられない。もっぱら期先限月で投機筋が、産地天候不順を背景に思惑的な売買を活発化させているに過ぎない状態にある。

 在庫環境に目を向けると、上海取引所在庫は相場が急伸した5月に入ってからも、目立った動きを見せていない。4月26日時点の21万7,081トンに対して、5月17日時点では21万7,591トンになっている。JPXの生ゴム指定倉庫在庫は4月以降に増減を繰り返しているが、5月10日時点の9,112トンに著しい在庫タイト感は認められない。その意味では、供給不安と低在庫環境があいまって期近限月主導で急伸した昨秋とマーケット環境は異なっているが、もっぱら供給リスクを織り込む地合が続いている。

 為替市場で改めて円安・ドル高傾向が強くなっていることはポジティブ、原油相場の上げ一服感が目立つことはネガティブ。

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