【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地熱波で350円突破の急伸
連載 2024-06-03
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=350円台まで値上がりし、3月21日以来の高値を更新する展開になった。東南アジアの天候不順を背景に、産地主導の上昇地合が続いている。5月は月初の304.00円水準に対して、50円近い上げ幅になった。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万5,000元台後半まで値上がりし、年初来高値を更新した。1万5,000元の節目突破から一気に値上がりした。産地主導の上昇地合が維持された。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、5月30日時点で前週比4.1%高の1キロ=86.30バーツとなった。5月16日に80バーツ台に乗せた後もハイペースな上昇が続いている。
引き続き、東南アジアの天候不順が強く警戒されている。異常気象エルニーニョ現象の影響とも言われるが、4月から約2カ月にわたって厳しい熱波が続いている。東南アジア各地で最高気温が40度を超えるような動きも報告されている。ゴムに限らず、農産物の生産全体に障害が発生しており、こうしたマクロ環境の中でゴム相場も急伸している。気温上昇や乾燥による生産障害に留まらず、長時間にわたる農作業が難しい気象環境になっている。
例年だと、5~6月は乾季から雨期への移行に伴い、ゴムは減産期から生産期に移行する傾向にある。しかし、今年は天候不順の影響で4月に続いて5月も不安定な供給環境が続いており、6月に改善がみられるかが焦点になる。日本の気象庁は春の間にエルニーニョ現象が収束に向かう可能性が高いとの見通しを示しているが、天候リスク軽減の有無が最重要視されている。
一方、5月は一貫して期近限月にプレミアムを加算していくような動きは見られなかった。通常、産地気象環境が不安定化した際には、供給リスクの織り込みで逆サヤ(期近高・期先安)が形成されるが、今回はそうした動きがみられない。消費国の在庫にタイト感は認められず、あくまでも「需給ひっ迫」ではなく「供給不安」を背景とした値上がり圧力に留まっている。
上海取引所の認証在庫は、4月26日時点の21万7,081トンに対して5月24日時点では21万8,301トンとなっている。供給不安を背景に上海ゴム相場は急伸しているが、それが在庫の取り崩しには直結していないことが確認できる。あくまでも、供給不安の一点で急伸している。
JPX天然ゴム5月限の受渡価格は329.50円となった。4月限の329.90円、3月限の330.00円からほぼ横ばいであり、330円水準に居心地の良さを感じている向きが多いことが窺える。受渡高は415枚で、4月限の380枚を上回った。
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