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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、300円の節目水準で小動き

連載 2024-03-11

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=300円の節目水準で揉み合う展開になった。強弱材料が交錯する中、積極的な売買は見送られている。出来高も極端な低迷状態になり、300円の節目水準に居心地の良さを感じた向きが多かったことがうかがえる。2月22日の307.50円で上げ一服となった後、300円水準で調整売りが一巡し、動意を欠く展開になっている。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元の節目水準で抵抗を受けて、1万3,000元台後半で売買が交錯する展開になった。2023年12月以降のボックス相場が踏襲されている。

 3月5日に中国全国人民代表大会(全人代)が開幕した。今年の経済成長目標は「5%前後」と2023年と同水準に設定されている。マーケットの関心は成長目標を達成するために十分な政策手当が発表されるかだったが、2023年と比較して財政支出を大きく拡大させるような動きは見送られている。このため、中国経済の減速は避けられないとの見方が広がったことはネガティブ。原油や非鉄金属相場なども全人代直後は失望売りが優勢になった。

 一方、日経平均株価は過去最高値更新が続き、一時は4万円台の大台に乗せた。このため、株価との連動性を重視するとゴム相場は310円台乗せも支持される局面だったが、株価との連動性が薄れている。ただし、株高環境でゴム相場を売り込んでいくような動きまではみられず、値動きの鈍さの方が目立った。

 為替相場が円高・ドル安に振れたことはネガティブ。日本銀行のマイナス金利解除の時期が近づいているとの見方、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利下げ観測が強化されたことなどが、円高・ドル安を促している。1ドル=151円目前から、3月7日には147円台後半まで急落している。このため、為替要因では300円の節目を大きく下抜く展開が支持される環境だったが、為替要因での積極的な売買も見送られた。

 結果的に株高でも買われず、円高でも売られず、強弱材料が交錯する中でボラティリティは高まらず、持高調整に終始している。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、3月7日時点で前週比4.9%高の1キロ=81.09バーツとなった。東南アジアでは乾燥傾向が一段と強くなっており、ゴムの集荷量も落ち込み始めている。乾季でウインタリング(落葉期)が進行し始めていることがうかがえる。まだ本格的な集荷減にはなっていないが、産地相場が高値更新を続けていることはポジティブ。ただ、JPXゴム相場の当限に対してリスクプレミアムを加算し、逆サヤ(期近高・期先安)形成を進めることは見送られた。

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