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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、供給不安で急伸地合を再開

連載 2024-03-18

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=330円台まで急伸する展開になった。300円の節目を挟んで薄商いの持高調整が進んでいたが、産地相場の急ピッチな上昇が続いていることを受けて、改めて価格水準を切り上げている。2017年1月以来となる約7年2カ月ぶりの高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台前半まで値上がりする展開になった。1万3,000元台後半で動意を欠く展開が続いていたが、国際相場の値上がり傾向を受けて、上海ゴム相場に対しても買いが膨らんでいる。1月2日以来の高値を更新した。

 産地相場は年初からほぼ一貫して上昇しているが、3月入りしてから上昇ペースがさらに加速している。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)の現物相場は、3月14日時点でUSSが前週比8.3%高の1キロ=85.45バーツ、RSSが同9.0%上昇の90.55バーツとなっている。RSSの年初からの上昇率は58.0%に達している。

 産地相場急伸の背景にあるのは、天候不順と減産期に突入した季節トレンドの2つだ。2月の段階から産地天候不順は報告されていたが、集荷量は安定していたことで大きな混乱はみられなかった。しかし、3月に入ってからは集荷量が落ち込んでおり、供給不安の織り込みが本格化している。

 今年は2月下旬の段階で、タイ北部などで高温や強風被害が報告されていた。最高気温が40度前後に達するなど、農作業全体への影響が警戒されていた。一方、インドネシアでは豪雨による洪水や地滑りなどが報告されている。異常気象「エルニーニョ現象」は収束に向かいつつあるが、東南アジア全域で気象環境が不安定化している。天然ゴム以外にロブスタコーヒーやパーム油なども供給リスクを織り込む動きをみせている。

 日本の気象庁は、3月11日に発表した「エルニーニョ監視速報」において、春の間にエルニーニョ現象が収束する可能性を80%とする一方、夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性を40%とした。ラニーニャ現象は世界的に農産物生産に大きなダメージをもたらす傾向がみられるため、今後の気象環境に注意が求められる。また、現在のタイは乾季のピークに向かうことになる。例年だと4月頃に減産圧力が最も強まる傾向にあるため、天候不順を考慮に入れなくても集荷水準は抑制されやすい。

 JPXゴム相場は期近限月にプレミアムを加算する動きを強めている。ただし、生ゴム指定倉庫在庫は2023年末の5,916トンから2月末時点で8,253トンまで増加しており、国内在庫にタイト感は認められない。上海取引所在庫も増加が続いている。

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