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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、不安定化も横ばいが続く

連載 2024-04-15

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=320~335円水準で揉み合う展開が続いた。上海ゴム相場の堅調地合、円安や原油高が下値を支えた。しかし、産地相場の上値が依然として重いことで、戻りでの売り圧力も強く、結果的に明確な方向性を打ち出せなかった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台中盤から1万5,190元まで一時急伸したが、その後は1万4,000元台後半まで上げ幅を削る展開になっている。引き続き経済活動が短期底入れしているとの評価が強く、非鉄金属や原油相場と同様に下値は固い。ただし、本格的な上昇トレンドを形成するまでの勢いはなく、高値波乱の不安定な値動きにとどまった。

 中東情勢が緊迫化していることで、原油相場は2023年10月以来の高値圏での取引が続いている。また、中国経済の改善評価から銅やニッケルといった非鉄金属相場も堅調に推移している。産業用素材市況全体が強含んでいることはポジティブ。ただし、それをゴム相場の上昇トレンドに繋げていくような動きまではみられなかった。

 中国の3月新車販売台数は前年同月比9.9%増の269万4,000台。自動車メーカー各社が相次いで値下げに踏み切り、需要を喚起している効果が出ている模様だ。新車向けタイヤ需要環境の改善傾向はポジティブだが、ゴム相場の反応は限定された。

 中国では、雲南省などで天候不順が報告され、中国国内のゴム供給がタイト化しているとの報告もポジティブだが、本格的な供給リスクのプレミアム加算には至らなかった。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、4月11日時点で前週比2.1%安の1キロ=83.88バーツ。産地集荷量は、東南アジア各地の天候不順、減産期のピークを迎えて抑制された状態で安定している。しかし、産地相場は急ピッチな上昇地合に対する反動局面が続いており、まだ底入れを確認するには至っていない。このため、消費地相場も上値の重さが残されている。

 日本の気象庁が4月10日に発表した「エルニーニョ監視速報」によると、春の間にエルニーニョ現象が収束する可能性を80%とする一方、夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性を50%とした。ラニーニャ現象は世界各地で農産物の不作を促す傾向が強いため、今後の展開には注意が必要。

 為替市場では1ドル=151円台での膠着状態から、4月11日には153円台に乗せる展開。34年ぶりの円安水準となっていることはポジティブ。ただし、日本当局がいつ円買い介入に踏み切っても不思議ではない状況になっており、為替要因で乱高下しやすい環境になっている。

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