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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導の急伸が一服

連載 2024-03-25

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=364.00円まで値上がりして2017年1月以来の高値を更新した後、利食い売りで340円台前半まで軟化する展開になった。供給不安を背景とした産地相場高を手掛りに、高値更新が続いた。ただし、週中盤は産地相場が上げ一服となり、つれて短期筋の利食い売りに上値を抑えられる展開になった。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万5,805元まで急伸した後、1万5,000元の節目を割り込む展開になった。産地相場の急伸傾向を手掛りに2011年11月以来の高値を更新したが、その後はJPXゴム相場と同様に利食い売りが優勢の展開になった。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、3月21日時点で前週比1.4%安の1キロ=90.19バーツとなっている。14日に90バーツ台に乗せ、18日には94.44バーツまで更に急伸していたが、19日以降に軟化している。

 産地での天候不順に関しては目立った変化がみられない。主産地タイでは北部を中心にサマー・ストームの発生が報告されており、高温や強風、ひょうなどの異常気象が続いている。タイ気象庁からは農業や畜産業への影響についても注意喚起が行われている。また、3月も下旬に差し掛かる中、減産シーズンもピークに向かいつつある。例年だと4月に最も強力な減産圧力が発生する傾向にあり、これから供給環境は改善よりも悪化するリスクの方が高い状況にある。

 ただし、急激な値上がりを受けてRSSは中央ゴム市場の集荷量が上振れするような動きもみられ、現物相場は上げ一服となっている。このまま急騰相場一服で鎮静化に向かうのか、改めて供給不安を織り込む動きをみせるのかが焦点になる。3月の急伸地合はもっぱら産地相場に主導された値動きのため、産地相場の動向に敏感に反応する地合が続きやすい環境になっている。

 原油相場は2023年11月上旬以来の高値を更新している。中東やロシア産の供給不安に加えて、需給見通しが改善している影響が大きい。国際エネルギー機関(IEA)は、2024年の国際需給バランスについて従来の供給過剰から「若干の供給不足」の見通しに修正している。ただし、原油高を手掛りにゴム相場を買い進むような動きは限定された。

 一方、18~19日の日本銀行金融政策会合ではマイナス金利解除が決定された。しかし、今後の断続的な利上げは想定されていないとの見方から為替市場では逆に円安圧力が強まり、1ドル=151円台まで円安・ドル高が進行した。円建てゴム相場に対してはポジティブな動きだが、為替主導の売買も限定的だった。

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