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とある市場の天然ゴム先物 33

【2022年振り返り①】天然ゴム先物市場の動向・日本編

連載 2023-01-17

②天然ゴム先物市場はどれだけ盛り上がったか

 それでは次に、市場の盛り上がりを表す指標である取引高や取組高(建玉残高)を見てみましょう。

RSS3先物 一日平均取引高推移

出所:JPXより筆者作成

 市場の盛り上がりという点で、2022年は2021年に引き続き取引高が低下しています。

 2022年の一日平均取引高(ADV)は2,395枚となり、前年の2,995枚から大きく減少しています。2022年はエネルギー価格が高騰する中で、天然ゴム先物価格のみ取り残されて相場の盛り上がりに欠ける状況ではありましたが、残念ながら取引高の減少傾向に歯止めが掛かっていません。

 この点、取引高をやや戻したシンガポール市場(SGX TSR20)や、成長著しい中国市場(INE TSR20)とは対照的になっており、次回に世界の天然ゴム先物の市場動向を取り上げる際に、こうした背景について考察してみたいと思います。

一日平均取引高 他市場との比較

出所:JPX、SGX、SHFE、INEより筆者作成

 では誰が取引を減らしているかという点ですが、ここで投資家の主体別の取引高を集計した統計である「投資部門別取引状況」を見てみましょう。

RSS3先物 投資部門別取引状況(月次、売買合計)

出所:JPXより筆者作成

 2021年の特徴として、2月以来、個人投資家のシェアが下落し、結果として海外投資家のシェアが増加することになりましたが、その傾向は2022年も続いています。2022年8月には個人投資家の取引高シェアが10%を切ることとなりました。

 2022年は年間を通じて月間取引高の変化に大きな傾向がないところ、個人投資家のシェアの低下は取引高自体が減少していることを示しています。実際、2021年1月時点で売買合計取引高が23,116枚であったところ、2021年12月には14,124枚となり、2022年12月は9,648枚となっています。

 2022年の取引高低迷は相場要因も大きいところではあると思いますが、構造的な市場流動性の向上を目指すうえで、減少した個人投資家のフローの再獲得が大きなテーマとなるはずです。

 それでは次の指標に参りましょう。市場の盛り上がりという点において、2022年の特徴の二つ目は減少傾向であった取組高(建玉残高)が下げ止まったことです。

RSS3先物 取組高推移(2021年)

出所:JPXより筆者作成

 第8回でもご紹介しましたが、取組高は投資家が新しく積み上げたポジションの総和であり、いわば市場のマグマのエネルギーを表していると言えます。

 2021年初に14,000枚ほどあった取組高ですが、大きく減少して年末には1968年以来初めてとなる10,000枚を割り込む水準にまで落ち込みました。2022年初も低水準でスタートしたものの、3月の年間高値を付けるタイミングで11,000枚を超える水準まで大きく回復します。

 上昇相場が続かなかったことで取組高もすぐに戻しましたが、その後は6月から続いた下落相場の底となった9月初旬、12月初の相場反発前となる11月中旬に10,000枚を回復する場面があったほか、12月中旬から急回復し、足元では12,000枚の水準で推移しています。

 ではこうした取組高の回復傾向に寄与している主体はどこかを調べるために、投資家の主体別の取組高を集計した統計である「投資部門別建玉内容集計表」を見てみます。

RSS3先物 取組高シェア推移(週末時点、売買合計)

出所:JPXより筆者作成

 灰色のボックスは取組高が10,000枚を回復した期間となります。赤い点は週末時点のRSS3先物価格を示していますが、2月と11月~12月は相場反発時、8月~9月は底値を付けるタイミング、2022年末時点は相場には大きな動きがなかったなど、取組高回復時の相場の動向はまちまちでした。

 この回復期間の傾向としては、海外投資家の建玉保有シェアが高いことが挙げられます。もちろん海外投資家には、現物ゴムの供給者、ファンド、スペキュレーション目的で売買を行うトレーダーなど、様々なプレイヤーが混在していますので、合計した数値から細かい背景を把握することは困難です。

 とはいえ、取組高の増減のドライバとなっているのは海外投資家が中心ということは押さえておくべき傾向でしょう。

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