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とある市場の天然ゴム先物 33

【2022年振り返り①】天然ゴム先物市場の動向・日本編

連載 2023-01-17

③サプライチェーンにどれだけ貢献したか

 天然ゴム先物のポジションを取引最終日まで保有し続けた場合、最終決済として売り手から買い手に現物の天然ゴムが受け渡されます。つまり天然ゴム先物は単なる金融取引ではなく、現実の天然ゴムのサプライチェーンに結びついていると言えます。

 そこで最後に、現物の天然ゴムと関連するデータについて見てみましょう。

 まずは天然ゴム先物で受渡し対象となる天然ゴム(RSS)の在庫状況となります。こうした天然ゴムは大阪取引所が指定する倉庫(指定倉庫)に在庫として保管されています(詳しくは第9回をご参照下さい)。

RSS3 指定倉庫在庫集計(月次)

出所:JPXより筆者作成

 2020年の6月以降、コロナの影響でサプライチェーンが分断されたことにより、指定倉庫における在庫が大きく減少しました。2020年11月には一時4,000トンを割り込み、指定倉庫以外でも天然ゴムの供給が逼迫します。2021年に入っても低在庫水準が続きましたが、3月に入ると少しずつ輸入が入り始め、年後半にかけて10,000トン近くまで回復しました。

 しかし2022年に入ると5月以降に再び在庫は大きく減少し、一時4,000トンを割る水準となります。この水準が年後半にかけて続きましたが、特に5月から7月にかけて、入庫水準が一時的に大きく低迷したことがこの在庫水準低迷の要因となりました。なお入庫状況は9月以降元の水準に戻ってきており、足元の在庫水準は回復傾向にあります。

 なおこちらの統計における指定倉庫における在庫は、コンテナヤードや指定倉庫以外の営業倉庫、タイヤメーカーの倉庫にある在庫は含まれませんのでご注意ください。

 それでは最後に、天然ゴム先物がどれだけ現物の天然ゴムとして受渡しをされたかを見てみましょう。

RSS3 受渡数量の推移

出所:JPXより筆者作成

 2022年の1~4月は例年と比べて受渡しが少なかったこともあり、この期間の指定倉庫在庫の水準に大きな変化がなかったことが分かります。5月以降は回復し、6月、7月はここ数年でも高水準で受渡しが行われた一方、前述のとおりこの期間の入庫が落ち込んだことから、指定倉庫在庫が大きく減少したことが分かります。

 2022年の年間ベースの受渡数量は12,580トンとなり、直近3年平均が約19,000トンと比べて減少しました。とはいえ受渡高の水準はその年によってばらつきが大きく、2022年が過去20年を見ても特別に低い水準になっているという訳ではありません。

 とはいえこの受渡高が減少傾向を続けるようですと、天然ゴム先物市場の存在意義の一つである、サプライチェーンを担うインフラ機能が低下することを意味しますので、状況を注意深くウォッチしていく予定です。

 以上が2022年の天然ゴム先物市場の動向となります。今回は日本の天然ゴム先物市場動向を取り上げましたが、次回では海外の市場動向を分析してみたいと思います。

※次回の更新は2022年1月下旬頃の予定です。

【もっと知りたい方に!】
JPX「ゴム取引の基礎知識」
JPX「ゴム(RSS)市場指定倉庫入庫、出庫及び在庫集計」
JPX「天然ゴム先物情報」
JPX「投資部門別取引状況」

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