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とある市場の天然ゴム先物 29

【2021年振り返り②】天然ゴム先物・市場動向編

連載 2021-12-21

③サプライチェーンにどれだけ貢献したか

 天然ゴム先物のポジションを取引最終日まで保有し続けた場合、最終決済として売り手から買い手に現物の天然ゴムが受け渡されます。つまり天然ゴム先物は単なる金融取引ではなく、現実の天然ゴムのサプライチェーンにもしっかりと結びついていると言えます。

 そこで最後に、現物の天然ゴムと関連するデータについて見てみましょう。

 まずは天然ゴム先物で受渡し対象となる天然ゴム(RSS)の在庫状況となります。こうした天然ゴムは大阪取引所が指定する倉庫(指定倉庫)に在庫として保管されています(詳しくは第9回をご参照下さい)。

RSS3 指定倉庫在庫集計(月次)

出所:JPXより筆者作成

 2020年の6月以降、コロナの影響でサプライチェーンが分断されたことにより、指定倉庫における在庫が大きく減少しました。2020年11月には一時4,000トンを割り込み、指定倉庫以外でも天然ゴムの供給が逼迫したことから、10月には先物を利用した早受渡し(受渡日を待たずに当事者間で受渡しを行うこと)が成立したほどでした。

 この流れを受けて2021年初も低在庫水準が続きましたが、3月に入ると少しずつ輸入が入り始め、足元では10,000トン近くまで回復しています。

 なお指定倉庫における在庫はコンテナヤードや指定倉庫以外の営業倉庫、タイヤメーカーの倉庫にある在庫は含まれません。

 そこでもう少しデータ範囲の広い、日本ゴムトレーディング協会が公表している「天然ゴム営業倉庫在庫推移」を見てみましょう(ただしこのデータも日本の全ての天然ゴム在庫をカバーしている訳ではないことにご注意下さい)。

天然ゴム営業倉庫在庫の推移(月次)

出所:JPX、日本ゴムトレーディング協会より筆者作成

 こちらのデータを見ますと、先物の指定倉庫在庫とほぼ同じ動きをしていますので、2021年に入って天然ゴムの在庫状況が改善したことが改めて分かるかと思います。

 それでは最後に、天然ゴム先物がどれだけ現物の天然ゴムとして受渡しをされたかを見てみましょう。前述のとおり取組高が大きく減少していますので、受渡数量も同じく減少したのでしょうか?

RSS3 受渡数量の推移

注:2021年の受渡高合計は12月の受渡高を含まない(2021年1月~11月)
出所:JPXより筆者作成


 2021年の1月から11月までの受渡高合計は14,750トンであり、また受渡高の月別推移を見ても例年と大きく変わりない水準であることが分かります。

 したがって先物を利用した受渡しついては、取組高減少の影響を受けておらず、先物市場の存在意義の一つである、天然ゴムのサプライチェーンを担うインフラとしての機能はまだ落ちていないと言えるでしょう。

 とはいえ、先物市場の流動性が低下することにより、こうした実需筋の投資家が市場で取引しにくくなり、更には想定した値段で売買できないことによるコスト増加などにも繋がります。

 そこで市場の縮小トレンドを止めるために、取引高や取組高を従来の水準まで回復させることが2022年に向けた喫緊の課題と認識しているところです。

 さて、今回で2021年最後の更新となりました。ネタ切れ感が出てきている連載ではありますが、新年よりまた心機一転進めて参りますので、どうぞ引き続きよろしくお願いします。

 それではよい年末をお過ごし下さいませ!

※次回の更新は2022年1月中旬頃の予定です。

【もっと知りたい方に!】
JPX「ゴム取引の基礎知識」
JPX「ゴム(RSS)市場指定倉庫入庫、出庫及び在庫集計」
JPX「天然ゴム先物情報」
JPX「投資部門別取引状況」

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