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とある市場の天然ゴム先物 19

【市場比較③】日本と中国の天然ゴム先物市場 (2)

連載 2021-07-27

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 前回、日本と各市場の天然ゴム先物市場の比較の第二回として中国の上海先物取引所(Shanghai Futures Exchange, SHFE)を取り上げました。

 今回は上海先物取引所の傘下として2013年に設立された、上海国際エネルギー取引所(Shanghai International Energy Exchange, INE)との比較をしてみましょう。

海外投資家に開かれた先物市場

 前回もご紹介しましたが、中国で先物市場が正式に開始されたのは1990年代前半となります。上海先物取引所で現在取引をされている天然ゴム先物もこのタイミングで取り扱いが開始されました。

 その後、2000年代に中国経済が急拡大したことを背景に、中国の先物市場は一気に急発展を遂げます。天然ゴム先物では2003年に取引高で日本を抜くことになりますが、その一方で中国の先物市場へのアクセスはあくまでも中国国内の投資家に限定されていました。

 この流れが変わったのは2013年です。中国証券監督管理委員会(CSRC)が「資本市場が中国(上海)自由貿易試験区をサポートするための若干の政策措置」を発表し、国際原油先物プラットフォームの設立のために上海先物取引所による上海国際エネルギーセンター(現取引所)の設立や、条件を満たす外国籍の投資家による先物取引が認められることとなります。

 その後、2013年11月に上海自由貿易試験区において中国国内で5社目の先物取引所として上海国際エネルギーセンターが設立され、また2015年に「金融改革40ヵ条」と呼ばれる基本方針が通達されますが、実際に最初の先物商品(ミディアム・サワー原油先物)の取引が開始されるのは2018年3月まで待つこととなります。

 なおINEの設立は、当初は「人民元の国際化」や「人民元建て原油先物市場の国際指標化」を目指した政策の一環であったと言われていますが、原油先物の取引開始以降、2019年には天然ゴム(TSR20)、2020年には低硫黄燃料、電気銅の先物が上場するなど、海外と投資家に開放された先物市場として上場商品のラインナップを拡大しています。

 こうしたなかで、2019年8月12日に取引を開始したTSR20先物は、INEにおいて2番目、海外投資家への開放という意味では中国先物市場において4番目に取引を開始した商品となります。

 この背景としては、天然ゴムはタイヤ生産等の戦略的商品であること、中国が世界消費の約43%を占めること、自国での生産量の約8倍が海外輸入であることに加え(2020年データ、IRSG調べ)、先行して取引されていた上海先物取引所の天然ゴム先物は中国独自の制度設計であることなどから、世界の天然ゴム消費の中心であるTSR20の国際指標としての地位を確立したい、という政策的な思惑が想像されるところです。

INE TSR20先物の一日平均取引高、月末取組高推移

出所:INEより筆者作成

 2019年8月の取引開始以降、巨大な中国市場の規模にも支えられ、INEのTSR20先物の取引高や取組高は堅調に推移しています。TSR20先物の国際指標であるシンガポール取引所の2019年の一日平均取引高が7,391枚、2019年末の取組高が27,211枚であることを勘案すると、稼働後すぐに先物市場の規模としてはシンガポールを凌駕したことが見て取れます。

 このようにINEのTSR20先物は取引開始から順調に成長しているように見えますが、一方で同取引所の他の先物商品の市場規模と比べてみますと、いま一歩伸び悩んでいるというのが正直なところでしょう。

INE 先物取引高(月間)

出所:INEより筆者作成

 例えば主力商品であるミディアム・サワー原油(2018年3月取引開始)や低硫黄燃料(2020年6月取引開始)では、取引開始後の早い段階で月間100万枚の取引高を達成しています。

 もちろん商品スペックや取引単位が異なりますので取引高の水準をそのまま比べることはできませんが、上海先物取引所における天然ゴム先物の2020年月間平均取引高が841万枚であり、天然ゴム消費量のポテンシャルを考えますと少し物足りないという印象を受けます。それでも十分羨ましい水準ではありますが・・・。

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