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連載「つたえること・つたわるもの」(44)

膝を打つ・相槌を入れる、話し手・聴き手、感動の共振・共鳴。

連載 2018-07-10

出版ジャーナリスト 原山建郎

 私が大学の教員に転じたのは、56歳の夏だった。それまで34年勤めた出版社を急に辞めることになったからである。はじめの4年間はキャリア系の授業、つまり学生の就職活動に役に立つ講義を行った。そして、60歳から70歳で定年を迎えるまで、非常勤講師としてさまざまな授業を担当するようになった。

 たとえば、「マスコミキャリア概論」では、私が毎週のように、雑誌の編集長、広告会社のアートディレクター、テレビ局のプロデューサーなどに会い、なぜその仕事を志したのか、働く喜び・仕事の価値は何か、現在のポジションに至るまでのキャリアパス(業務経験)などをインタビュー、その取材ノートを片手に、ホットな話題をレポートするスタイルだったが、毎回、前の方から席が埋まっていく授業になった。

 その当時、マスコミ業界に憧れる学生が多く、最初の授業では80人定員の教室に130人も出席したので、教室の両脇と後方、教壇の脇に座りきれない学生が「立ち見」する事態になった。翌週からは140人が座れる階段教室に変更されたが、あのとき感じた、学生たちの熱気と眼差しはすごかった。

 これもたとえば、リクルートの雑誌、『就職ジャーナル』編集長、前川孝雄さんのキャリアパスや、就職を志す学生への素敵なメッセージを紹介すると、その一つひとつに、こぞって膝を打ち、なるほどと相槌を入れ、いちいちうなづく姿を目の当たりにして、授業を担当する私は学生たちから大きな力をもらった。これは、私がかつて経験した雑誌編集長というキャリアを通して、前川さんの仕事ぶりに感動し、その生き方に共感した、その私の思い(心の波動)に学生たちがシンクロ(同期)した瞬間であった。

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