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とある市場の天然ゴム先物 09

【用語・データ集③】天然ゴムと先物市場の橋渡しとなるデータから需給を読む

連載 2021-02-24

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 前回では用語解説とデータの探し方の第2弾として、ゴム先物市場の活性度を測る指標についてご紹介しました。今回は実物の天然ゴムと先物市場の橋渡しをするデータを見てみましょう。

建玉を取引最終日まで持っていたら何が起こる?

 前回、先物市場でAさんが10枚売り、Bさんが10枚買いで売買が成立した場合、Aさんは売10枚、Bさんは買10枚のポジション(建玉)を新たに持つことになるとご説明しました。

 それではこのポジションを限月の取引最終日まで持ち続けたらどうなるでしょう?

 大阪取引所に上場するゴム先物は、RSS3、TSR20ともに「受渡しありの現物先物取引」となっています。これは取引最終日の取引終了までポジションを持ち続けていたら、売り方は天然ゴムの現物を買い方に渡し、買い方は受渡値段(最終帳入値段ともいいます)で計算した金額を売り方に渡すことで最終決済をすることになります。

 ここで実例として、ゴム報知新聞NEXTで人気連載中のマーケットアナリティクスの記事を見てみましょう。

 「1月25日にはJPXゴム(RSS3)1月限が納会を迎えたが、受渡価格は335.00円、受渡高は247枚となった。昨年12月限の292.00円から43.00円の急伸になっている・・・」(2021年2月1日記事)

 この記事から、RSS3先物の2021年1月限は取引最終日(1月25日)の取引終了時まで反対売買されなかったポジションが247枚あり、これが天然ゴム現物と受渡値段335.0円を元に計算した金額(売買をしてポジションを持ったときの約定値段に受渡高を掛けた金額となります)で決済されることが分かります。RSS3先物1枚の取引単位は天然ゴム5トンですので、1月では247枚×5トン=1,235トンのRSS3が売り方から買い方に渡されたということになります。

 ちなみに1月限の取引最終日におけるRSS3先物全体の取組高は13,717枚ですので、受渡高247枚は取組高全体の1.8%となります。また1月限の最大建玉残高は7,836枚(2020年8月25日)であり、こちらと比べると3.2%ということになります。ここからゴム先物の決済は圧倒的に反対売買が多く、受渡決済の数量は限られていることが分かります。

 数量は多くないとはいえ、天然ゴム調達の機会を投資家に提供することはゴム先物市場の本質的な役割の一つです。実際、2020年に先物で受渡されたRSS数量はタイから日本への輸入量の21%を占めており、先物市場は天然ゴムのサプライチェーンの一部としての役割を果たしているといえるでしょう。

RSS3先物価格、受渡高、受渡高・取組高比率の月次チャート


1970年代初頭から受渡高が増加し、先物価格が史上最安値水準であった1999年から2000年に急増した。とはいえ先物市場が機能し始めた1970年以降、取組高に占める受渡高の比率は一貫して10%以下の水準で推移している。
出所:日本取引所グループ


 なお各月の受渡高については、2020年7月以降は日本証券クリアリング機構ウェブサイト上の取引所取引に関する統計データで、それ以前はTOCOMウェブサイトの受渡集計表で確認できます。

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