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連載「つたえること・つたわるもの」(49)

鈴愛の「半分、青い。」、「聞こえる」と「聞こえない」のあいだ。

連載 2018-09-25

出版ジャーナリスト 原山建郎

 今週の土曜日、いよいよ最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』は、小学三年の秋、おたふくかぜにかかって突然、左耳の聴力を失ったヒロイン、楡野鈴愛(にれのすずめ)と、同じ七夕の日に同じ病院で生まれた萩尾律を中心に展開するドラマだ。同作品のモチーフは、脚本を手がけた北川悦吏子さんが体験した突発性難聴(突発的に起こる原因不明の感音性難聴)による左耳の失聴だったという。

 北川さんはNHK公式サイトのスペシャルインタビューで、次のように語っている。

 いまから3年ほど前に、私自身、左耳を失聴したのが始まりです。ちょっとショックではあったんですが、傘を差すと左側だけ雨音が聴こえず、雨が降っていないかのように感じるのがおもしろくて、「これはドラマになる」と思いました。片耳の聴こえないヒロインが、傘を差しながら空を見て、「半分、青い。」と、つぶやく――。そんな情景が、ポンと浮かんできたんです。

 ドラマの後半で、がんであることが判明した母(楡野晴)が、小学校時代の鈴愛が、雨の日に傘をさして元気に帰ってくる様子を思い出して、「(鈴愛には)右だけ雨降っとる。左だけ晴やね」と言いながら、「私もがんになるまで見えなかったことが、いま見えるようになった」という意味のことをつぶやいていた。
ほんとうは、このドラマでヒロインの鈴愛が、「(左耳が)聞こえなくなったことで、わかるようになった」ことが描かれることを期待していたのだが、晴さんのひと言で「よし」とすることにした。

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