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連載「つたえること・つたわるもの」(49)

鈴愛の「半分、青い。」、「聞こえる」と「聞こえない」のあいだ。

連載 2018-09-25

 さて、「話を聞いて」「原稿に書く」ことが仕事であるフリーライターにとって、遺伝性の高音域難聴でかつ軽度難聴であることは、インタビューの大きな妨げとなるはずである。しかし青山さんは、聴力レベルで問題はあるはずなのに、「聞く」仕事で支障を感じたことはなく、むしろ「聞こえにくい」ことで「よく聞く」ことができていると感じることさえ多い、という。さきに、耳鳴りを受け入れて「折り合い」をつけたように、「聞く」という行為についても「折り合いをつける」努力が大きく関係しているらしい。

 それはたとえば、青山さんが1年半かけて、大阪の淀川キリスト教病院のホスピスに不定期で通いながら、14名の入院患者にインタビューしてまとめた一冊、『人生最後のご馳走 淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院のリクエスト食』(幻冬舎、2015年)の取材にまつわる体験がある。

 このホスピスを終の棲家に選んだ、末期のがん患者の取材であっても、特別な方法をとるわけではないが、ひとつだけ、ほかのインタビューとは異なる思いがあった。青山さんの頭の片隅には、いつも「この人がこの内容について言葉を口にするのは、これが最後かもしれない」という畏れがあったのである。

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