【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、急伸地合一服で調整圧力
連載 2021-03-08
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが2月25日の1キロ=293.60円まで上昇した後、260円台まで反落する展開になっている。
昨年12月3日高値266.70円に続いて、同10月29日高値292.90円も上抜き、2017年2月以来の高値を更新している。ただ、その後は米長期金利の急伸でリスク投資の地合が不安定化したこと、3月5日から中国で全国人民代表大会(全人代)が始まるイベントリスクもあり、利益確定の手仕舞い売りが上値を圧迫している。円安傾向はポジティブだが、調整圧力が目立っている。
上海ゴム先物相場も、2月25日の1トン=1万7,335元をピークに、1万5,000元水準まで値下がりしている。全人代を前に、最近の急伸地合の反動圧力が強くなっている。
需要環境には大きな変化は生じていない。新型コロナウイルスのワクチン接種は順調に進んでおり、米国では5月までにすべての成人に対してワクチン提供が可能な状態になっている。一部地域では新規感染者や死者の増加も報告されているが、経済正常化のプロセスに変化は見られない。半導体不足の影響で自動車生産・販売に一定の影響も報告されており、GMが北米3工場の休止延長を発表するなど、供給サイドの事情で新車用タイヤ需要が抑制されるリスクには注意が求められる。ただ、各国の新車販売は全般的に拡大トレンドにあり、消費者マインドの改善もあってタイヤ販売環境に対しては強気見通しが維持されている。
一方、産地では2月下旬にかけての急激な価格高騰を受けて、集荷量の増加が報告されている。ただ、3月入りしてからは価格が沈静化していることもあり、集荷量も安定しつつある。タイ中央ゴム市場の3月4日時点の現物相場は、USSが前週比8.9%安の1キロ=60.49バーツ、RSSが同8.2%安の63.73バーツ。大きく値下がりしているが、これは集荷量の増加よりも消費地相場が高値から急反落している影響の方が大きいだろう。産地はこれから減産期に向かうが、供給サイドの動向はあまり重視されていない。
需給環境・見通しは2月の急伸局面と大きく変わっていないが、変化したのはマクロ投資環境である。米長期金利の水準が急ピッチに切り上がっていることで、株式や商品、新興国市場などで投資家が持ち高調整の動きを活発化させている。日経平均株価も高値から急落しており、その流れでゴム相場も利益確定の動きが優勢になっている。また、中国全人代では資産価格抑制のために政策引き締め方針が発表されるとの観測も強く、特に上海ゴム相場の上値が圧迫されている。
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