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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海の限月切り替えに注意

連載 2017-08-01

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=210円水準を中心に揉み合う展開になっている。

 上海ゴム相場の上げ一服感で東京ゴム相場の上昇にもブレーキが掛かっているが、改めて本格的に売り込むような動きまではみられず、明確な方向性を打ち出すに至っていない。円高環境の中では底固く推移しているが、逆に上値を試すような動きもみられず、再び膠着感が強くなっている。

 国際ゴム相場の主導権を握っているのは上海ゴム相場になるが、その上海ゴム相場も決め手を欠いている。現在は中心限月が2017年9月限から18年1月限に移行を進めている段階とあって、ロールオーバー(限月切り替え)中心のポジション調整が優先されている。

 9月限に対して1月限が20%前後の大幅な上鞘状態にあることで、9月限から期先へのロールオーバーが進まず、投げ売りが膨らんで急落するといった懸念も根強い。一方で、実際には特に限月間で目立った混乱状況もなく、カレンダー要因に伴う一時的な急落リスクを抱えながらも、上海ゴム相場は明確な方向性を打ち出せていない。

 中国コモディティ市場では、鉄鉱石や石炭、銅相場など他の産業用素材が総じて底固く推移しており、上海ゴム相場のみが急落するリスクは低い。一方で他コモディティ市況も急伸するまでの勢いはなく、底固いものの売り買い双方が決定打を欠いた状態に陥っている。

 産地の集荷量は安定している。インドネシアでやや降水量が不足がちだが、タイ、マレーシア、ベトナム、カンボジア、ラオスなどの降水量は例年並みから例年を若干上回っている。タイ中央ゴム市場の未燻製シート(USS)やRSSの集荷量も今季最高水準にある。ただ、産地現物相場も専ら上海ゴム相場の値動きに一喜一憂する展開になっており、特に良好な供給環境を背景に売り込むような動きは確認できない。

 タイでは、道路建設、補修で年内に7,712トンのラテックを使用する市況対策が行われていることが明らかにされた。アスファルトに5%の天然ゴムを混合するのが最適との調査結果も地方道路省から発表されている。ただ、この種の市況対策による需給引き締め効果は限定されており、マーケットでは特に材料視されていない。

 引き続き上海ゴム相場の動向に一喜一憂する展開になるが、その上海ゴム相場は明確なテーマを設定できていない。中国コモディティ市況全体の強含みの展開が続く間は上振れリスクを抱えるが、突然の急落リスクも抱えた不安定な相場環境が続くことになる。
 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)

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