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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、納会前に当限が急伸するも

連載 2017-06-02

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1キロ=236.70円まで上昇して4月11日以来の高値を更新した後、220円台後半まで軟化する展開になった。

 5月25日に5月限の納会を迎えるにあたって、期近限月が急騰したことが期先限月も押し上げた。為替相場が円安気味に推移したことや、原油相場が堅調に推移したこともポジティブ材料である。ただ、上海ゴム相場は上値の重さが再確認される展開になったことで、結果的に期先限月は明確な方向性を打ち出すには至らなかった。

 5月限は一時323.00円まで上昇したが、最終的には290.00円で納会を迎えた。産地勢の受け腰の強さが指摘されていたが、300円台での納会には一定の抵抗を見せた格好になっている。ただ、こうした当限の堅調地合に連動して6月限は5月限にサヤ寄せする形で急伸し、納会日直前には期近2限月の上昇圧力が特に目立ったことが、ゴム相場全体を下支えした。

 国内では依然として記録的な低在庫環境が続いているだけに、今後も受け渡しを巡る思惑から当限は波乱の展開になるリスクを有していることが再確認できる。

 もっとも、上海ゴム相場は1トン=1万4,000元水準に抵抗を受け、上値の重さが再確認されている。格付け会社ムーディーズが24日に中国国債を格下げしたショックは限定されたが、金融引き締めによって流動性が欠如した状態に変化は生じていない。中国コモディティ市場に対しては投機マネーの流入が見送られる状況が続いており、鉄鉱石や石炭などと同様にゴム相場も上値の重い状況に変化はみられない。

 一方、生産地では乾季から雨季への移行が進んでおり、それに伴い産地集荷量も改善傾向を見せている。タイ中央ゴム市場でも未燻製シート(USS)、RSSともに今季最高の集荷量を記録している。現物相場は東京ゴム当限の急伸につられて若干強含みの展開になったが、特に産地主導で大きく値上がりする必要性は見いだせない状況になっている。

 東京ゴムが5月限の納会を終えたことで、目先は改めて上海ゴム相場の動向が注目されやすくなる。ただ、中国コモディティ市場全体の地合の悪さに変化がみられず、産地で集荷量が増加傾向にあることを考慮すれば、東京ゴム相場が本格的に上昇するハードルは高い。期先200円の節目割れでチャート上では底打ち感もみられるが、円相場の急落や仕掛け的な売買が行われない限り、上昇余地は限定されよう。

 (マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅努)

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