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白耳義通信 第89回

「ブリューゲルの絵から分かること」

連載 2024-02-28

 コロナ対策に掛かった費用と、ウクライナ支援が庶民に重くのし掛かりつつあるベルギーです。

 ニュースによれば、アントワープの巨匠ピーター・パウル・ルーベンス Peter Paul Rubens の筆頭助手であったアントーン・ヴァン・ダイク Antoon van Dyck の自画像が、ニューヨークのオークションで 243万ドル(日本円にして約3億6,500万円)で落札されたそうです。

 この絵は元々イングランド王チャールズ1世のコレクションだったものが、オランダ王宮のヘットロー宮殿 Het Loo に飾られたり、その後個人の所有になっていたものが、2016年から2020年までアントワープ Antwerpen のルーペンスの家 Het Rubenshuis に貸し出され鑑賞することができました。

 さて、ヴァン・ダイクやその師匠であるルーベンスより前を代表するベルギーの画家といえばピーテル・ブリューゲル Pieter Bruegel の名前を挙げることができます。ブリューゲルの絵は、亡くなったブリュッセルにある王立美術館より、オーストリアのウィーン美術史博物館に多くの作品を見ることができます。特に有名なのは1563年に描かれた「バベルの塔」でしょうか。

 ブリューゲルの作品は、ヒエロニムス・ボス Hieronymus Bosch に影響を受けたと思われる奇っ怪な絵(例えば「叛逆天使の墜落」)もありますが、農民たちの生活を多く題材にしたところから「農民画家」とも呼ばれています。それらの絵の中には、雪景色が多く登場します(例えばウィーン美術史博物館所蔵の「雪中の狩人」やブリュッセル王立美術館所蔵の「ベツレヘムの戸籍調査」など)。

 これはブリューゲルが生きていた時代は小氷河期にあったことの現れです。正確にはいつ始まったか今も尚議論されているようですが、16世紀から18世紀に掛けて小氷河期の時代だったようです。当時は多くの火山噴火があったようで、そのせいで灰や塵が大気中に吹き飛ばされ、太陽光が地球から反射。雪の日も多く、寒さも厳しかったようです。

 先日、ベルギーでも雪が降りましたが、20世紀初頭は年間30日前後降っていたのが、近年では10日も下回っていると、王立気象研究所 KMI から発表されていました。確かに私がベルギーへ来てから四半世紀の間、雪に見舞われたと記憶しているのは二回程度で、積もっても直ぐ融けてしまった印象があります。

 現在は地球温暖化が進んでいると言われていますが、遠い将来、この時代に生きる画家が描く絵を見た人々は、その絵から何を読み取るのでしょうか。

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