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白耳義通信 第88回

「店での挨拶」

連載 2024-01-16

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 大晦日、街の中心地であるマルクト広場 Grote Markt で予定されていた花火大会や、150基のドローンを使った「音と光のショー」が悪天候の為中止となり、2024年は静かな幕開けとなりました。それでも個人では禁止されている打ち上げ花火が上がった為、警察、消防が出動したり、ブリュッセルやアントワープでは、予定通り花火大会が行われたりと、街によっては騒々しかったり、賑やかな新年を迎えたところもあるベルギーです。

 日本で発生した能登半島地震や航空機衝突事故の様子は、こちらのニュースでも報道。ここベルギーの北部や北フランスでも大雨による洪水が発生し、家屋や農作物が水没したりと、新年から自然災害や事故のニュースに不安なりつつも、元日は、自宅で毎年恒例となっているウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートを見ながらシャンパンで新年を祝い、バターケーキで〆ました。昭和の時代に食べたバターケーキのトラウマがずっとあったのですが、良いバターを使ったバターケーキは、生クリームをも凌ぐ美味しさがあることをベルギーに来て知り、今では生クリームを使ったケーキでは物足りないくらいです。

 元日は商店街は閉まっているものの、パン屋やカフェは開いているので、午後は今まで行ったことのないカフェに散歩がてら行ってみました。すると店に入るなり Beste wensen「今年の幸運を祈ります」と声を掛けられビックリ。そう言えば日本で初めて行った喫茶店で、こんな風に声を掛けられたことがあったかなーとしばし思いを巡らす。年末には、スーパーで今まで会ったことの無い店員から Gelukkig Nieuwjaar「良い年を!」と声を掛けられたり、初対面の人でも自然にこんな声掛けができるのは良いなーと。日本はおもてなし文化が讃えられるけれど、何気ない挨拶も心が豊かになることを実感。

 ベルギー(欧州)では、店に入る時(大型店は別だけれど)や、レジで会計をする時、Bon jour 「こんにちは」や、Merci「ありがとう」、Bonne journée「良い一日を」、Et vous aussi「あなたも」と挨拶をするのは当たり前だけれど、日本でコンビニやスーパー、喫茶店でこのような挨拶をしていただろうかと自問自答。

 因みにベルギーではレジに買う物を置いて差し出す時に S’il vous plaît「お願いします」と言うのだけれど、フランスでは言わないらしく、以前フランスへ行った時、会計時に S’il vous plaît と言ったら「ベルギーから来たんだろ」と、言い当てられたことがある。フランス人にしてみれば、これはちょっと大袈裟に思えるのかも知れない。

 欧米では色々な人種が一緒に生活しているので、「あなたには危害を加えませんよ」という意味で挨拶をする必要があるのだろうし、日本は単一民族なので、挨拶をしなくともあまり問題ないこともあるのだろうが、こういうちょっとした声掛けが自然にできると、皆が幸せになれそうですね。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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