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白耳義通信 第91回

「ユーロヴィジョン 2024」

連載 2024-05-20

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 5月12日に行われた競馬のG1第19回ヴィクトリアマイルに出走したナミュール号ですが、出遅れが響いたのか、見せ場を作るところもなく8着に敗退。2番人気に押されたものの、鞍上の名手・武豊騎手でも追い上げならず。次走に期待しましょう。

 欧州で毎年5月に行われる祭典と言えば、ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト Eurovision Song Contest。このコラムでも、過去に取り上げたことがある。今年は、2023年大会で優勝したスウェーデン南部の都市、マルメMalmöにあるマルメ・アリーナで開催された。2024年は、政治が絡んだり、暴力沙汰が起こったりと、色々な事が起こった大会となった。

 ベルギーは “Before the Party’s Over” を歌ったミュスティーMustiiを送り出したものの、歌唱が不安定で決勝には進めず、準決勝敗退。こういう時、期待が掛かるのは隣国なのだが、そのオランダはヨースト・クレインJoost Kleinが「ユーロパパ」Europapaを歌い、観客からも熱烈歓迎され 5位で決勝に進むも、スタッフに不適切な行為を行ったという理由で失格処分を受け、決勝に進めず。ベルギーからの票の行き先が読めない状況になってしまった(自国には投票できないシステムになっている為)。

 また、ハマスと戦争状態にあるイスラエルが参加。エデン・ゴランEden Golanが英語とヘブライ語で“Hurricane” を歌っている最中、一部観客からのブーイングを浴びる自体に。エデン・ゴランのパフォーマンス中、会場外でも環境活動家グレタ・トゥーンベリ Greta Thunbergなどによるデモが行われ、一時、騒然とした雰囲気に包まれることに。

 ベルギーのオランダ語放送局VRTも準決勝の冒頭でスウェーデンからの生中継を中断し、停戦を呼びかけるなど、音楽祭も政治色が強く反映される大会となった。

 結局、優勝したのは “The Code “ を歌ったスイスのネモNemo。ピンクの羽毛のコートにスカートという出で立ちで、回転する円盤の上で歌うという躍動感溢れるパフォーマンスで観客を魅了。因みにベルギーのポイントは1位イスラエル、2位フランス、3位クロアチアという結果で、12、10。8 ポイントがそれぞれの国へ入り(優勝したスイスへは6ポイント)、視聴者は政治よりパフォーマンスを支持した結果となった。

 と、このように例年とは違い、論争の多い大会ではあったが、ユーロヴィジョンの凄いところは、ステージング。アリーナの観客もテレビの視聴者も両方楽しめる作りになっているところだ。普通のコンサートなら、会場に行った者は楽しめるが、それをテレビで見ても、なかなか会場の熱気が伝わってくることが少ない。逆にテレビの視聴者を意識すると、こぢんまりとした作りになってしまい、会場に来ている者が置き去りになってしまう。

 各アーティストの曲に合わせたステージングは見事としか言いようがない。是非、ユーロヴィジョンのオフィシャルサイトへ行って、各国のパフォーマンスの様子を見て頂きたい。

 https://eurovision.tv/

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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