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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地豪雨で急伸地合に

連載 2023-10-16

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=250円台まで急伸する展開になった。230円台をコアに方向性を欠く展開が続いていたが、10月10日以降の取引で急伸地合を形成し、2022年7月15日以来の高値を更新した。

 上海ゴム先物相場も1トン=1万4,000元台中盤まで急伸している。国慶節の連休前は1万3,000元台後半で上値の重い展開になっていたが、安値から大きく切り返して年初来高値近辺での取引になっている。

 突然の急伸地合の背景にあるのは、産地相場の急伸だ。タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、10月12日時点で前週比5.2%高の1キロ=55.39バーツに達している。9月下旬からじり高傾向にあったが、10月に入ってから上昇ペースが加速している。

 タイのゴム生産地では9月下旬から豪雨が報告されていたが、10月入りしてからその被害が一段と深刻化している。鉄砲水の発生や河川の氾濫・決壊など、洪水被害も広がりをみせている。特にタイ中部から北部にかけては大規模な被災が報告されており、生産に限らず流通への影響も報告されている。鉄道や道路などの輸送インフラもダメージを受けている。

 異常気象「エルニーニョ現象」の影響かは不透明だが、ベトナムやラオス、カンボジア、マレーシアなどでもモンスーン型の豪雨が報告されており、ゴム相場は供給不安を織り込む動きを強めている。

 産地相場の急伸を受けて、JPXゴム相場では当限が10月6日の232.50円に対して、12日高値が264.30円に達している。産地相場高を受けて当限が30円を超える急伸地合を形成したことで、期中から期先限月にかけても買いが膨らんだ。急激な逆サヤ(期近高・期先安)が形成されており、10月限と2024年3月限だと12日終値で14.80円の逆サヤになっている。典型的な需給ひっ迫リスクを織り込む相場展開になっている。

 あくまでも天候要因による供給不安のため、1週間で地合が大きく変わる可能性もある。ただし、主要生産で豪雨傾向が続くと、産地相場主導で価格が吹き上げるリスクを抱えることになる。天候相場型の値動きになっているため、上下双方に大きめのボラティリティを想定しておく必要がある。

 中東では、パレスチナを実効支配するイスラム組織ハマスが10月7日、イスラエルに対してミサイル攻撃を行った。イスラエルは8日に報復攻撃を行い、「戦争状態」に突入したと宣言している。ただし、地政学リスク主導のリスクオフ化、原油相場の急伸などは見送られ、ゴム相場に対する影響は軽微だった。

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