【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、安値低迷相場が支持される
連載 2023-07-31
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=200円の節目水準まで下落する展開になった。中国政府の景気刺激策に対する期待感が下値を支えるも、戻り売り優勢の展開を崩すには至らず、7月27日の取引では一時200円の節目を割り込む展開になった。為替相場が円高に振れたこともネガティブ。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台前半で上値の重い展開になった。
中国共産党中央政治局は7月24日、マクロ経済政策の調整を強化し、内需拡大に注力する方針を示した。経済運営の改善を継続的に推進する方針が打ち出されており、穏健な金融政策と積極的な財政政策を堅持すると表明された。これを受けて、マーケットでは中国政府が近く大規模な景気対策を打ち出すのではないかとの期待感を織り込む動きがみられた。原油や非鉄金属相場に対して買いが膨らみ、その流れでゴム相場も買われる場面がみられた。
しかし、その後は実際に大規模な景気対策が打ち出される可能性は低いとの慎重な見方が広がり、戻りを売られる展開になっている。習近平国家主席は5%前後の政府経済成長目標の達成に意欲を示しているが、現状では大規模な景気刺激策がなくても目標達成は可能とみられている。また、地方政府の債務問題が深刻化していることも、大規模な財政出動を困難にさせている可能性が高い。
まだ具体的な景気対策の内容が明らかにされていなため、中国経済、そしてゴム需要見通しを大きく変えるような動きがみられるかが焦点になる。
供給サイドに関しては、特に大きな動きはみられない。タイでは高温に加えて豪雨・洪水被害も報告され始めているが、供給リスクのプレミアムを相場に加算していくような動きはみられない。
異常気象「エルニーニョ現象」の発生で世界的に天候不順が深刻化しており、ゴムの供給サイドもリスクが高まっているが、潜在的なリスク要因との評価に留まる。さらに大規模な天候障害が発生し、ゴム供給に混乱がみられるか、注意が必要な状況になっている。
7月25日にはJPXゴム先物の7月限が受渡を迎えたが、受渡価格は203.10円となった。6月限の200.10円を3.00円上回ったが、これで3月限から5カ月連続で200円台での受渡であり、安値低迷相場が支持される結果になっている。
一方、為替市場のボラティリティが著しく高まっている。7月27~28日に日本銀行金融政策決定会合が開催されるが、その結果次第では8月上旬のゴム相場が為替要因で大きく動く可能性がある。前週中盤にかけては円高圧力の上値圧迫が目立った。
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