【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海ゴム主導でじり高続く
連載 2023-01-23
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=220円台後半までじり高の展開になった。上海ゴム相場の堅調地合が続いていることを受けて、連れ高している。特段の新規材料は見当たらなかったが、引き続き中国経済の正常化期待を織り込む動きが優勢になっている。2022年12月19日以来の高値を更新した。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,000元台前半から中盤まで値上がりする展開になった。1万3,000元の節目を挟んで売買が交錯していたが、改めて買い圧力が強まり、2022年9月下旬以来の高値を更新している。
上海ゴム市場では、中国経済成長加速への期待感を織り込む動きが続いている。新たな施策などが打ち出された訳ではないが、新型コロナウイルス対策のゼロコロナ政策終了を受けて、2023年のゴム需要環境に対して強気の見方が浮上している。春節の連休を控えていたが、価格水準を着実に切り上げている。
1月17日に発表された中国の10~12月国内総生産(GDP)は前年同期比横ばいとなり、7~9月期の3.9%増から急減速した。新型コロナの感染被害が拡大した影響が強く窺える状況にある。ただ、マーケットではその後のゼロコロナ政策解除の景気刺激効果に対する期待感の方が強く、あまり材料視されなかった。中国汽車工業協会は、2023年の新車販売台数が前年比で3%増の2,760万台になると予想している。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、1月19日時点でUSSが前週比1.5%高の1キロ=45.08バーツ、RSSが同3.0%高の48.49バーツ。上海ゴム相場が改めて地合を引き締めたことで、産地相場も強含んだ。春節前の在庫手当ての動きも支援材料になった模様だ。集荷量は安定しており、特に供給サイドのリスク織り込みは求められていない。
インドネシアでは、2022年12月以降に火山噴火や大規模地震の発生が続いているが、産地主導で供給リスクのプレミアムを加算していくような動きは確認できない。また、季節的にはタイでウインタリング(落葉期)が始まるが、季節的な供給量の抑制見通しを織り込むような動きも鈍い。
1月19日時点でのJPXゴム先物相場は、1月限の216.60円に対して6月限は227.50円であり、10.90円の順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。当限でも安値修正の動きがみられたことで、前週と比較すると順サヤが縮小していることはポジティブ。
1月17~18日に日本銀行金融政策会合が開催されたが、政策据え置きが決まった。ただ、それに伴う円安圧力は一時的であり、円建てゴム相場に対する影響は限定された。
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