白耳義通信 第75回
「2022年を振り返って」
連載 2022-12-26
2022 FIFAワールドカップ・カタール大会が終了しました。今回こそはと期待されたベルギーチームですが、なんと予選敗退。実力はあるのに大舞台ではなかなか力を発揮できないといったもどかしさが、ずっと続いています。FIFA ランキングも大会前の2位から4位に後退。ベテランが抜ける2026年のアメリカ・メキシコ・カナダ大会は、どうなるでしょうか。
さて、今年のクリスマスは例年と比べて静かなクリスマスを迎えています。街のイルミネーションも例年より大人しい気がしますし、各家庭も電気代を節約してか、あまり目立ちません。それから2階の窓に入ろうとするサンタクロースの人形も余り見かけず、厳かなクリスマスといった感じです。ブリュッセルでは、クリスマス・マーケットが立ったり、市庁舎を舞台にプロジェクションマッピングを使った「音と光のショー」を楽しめるようですが、わたしの家があるメッヘレンではクリスマス・マーケットも立っておらず、寂しい限りです。
やはり物価の高騰が影響しているのでしょう。例年であれば、クリスマス前の土曜日は「商店で過去最大の売上!」「カードの支払いができなくなった!」と、ニュースも賑やかですが、経済も上手く回っていないようです。
今年大きく変わったのは、多くの街で自由に車が乗り入れできなくなったことでしょうか。中世の時代にできた街は、城壁が取り壊され環状道路になっていることが多いのですが、一方通行の区間ができたり、これまで通過できていた車線が駐車スペースになったりと、街の中心部で生活する人にとっては不評のようです。
高速道路の休息所では、電気自動車の充電スタンドが目立つようになってきましたが、電気を他国から購入しているベルギーで、ガソリン車が廃止された後、果たして賄えきれるのか疑問です。電気自動車も高価となれば、購入できない人も出てくる。公共交通機関が復活してくるのでしょうか。
毎年クリスマス・イブの日には国王がお言葉を述べられるのですが、「試練にさらされた年」と総括され、「私たちの創造性と忍耐力があれば、直面している課題に対する答えを見つけることができるでしょう」と、現在のベルギーは厳しい状況にあるようです。
来年こそは、明るい話題で締めくくられることを願ってやみません。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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