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連載「ゴム業界の常識・非常識」(36)

インドのゴム人はマスクをしていなかった

連載 2022-10-11

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 9月にインドに3日間出張してきました。8月にアメリカ人はマスクをしていなかったとの話をしましたが、インドもほとんどの人が今やマスクをしていません。聞いてみると、2021年秋より新型コロナの感染者が減り、バス、公共交通機関、飛行機の機内以外では、仕事時も家でもだれもマスクをしないことが当たり前になったとのことです。

 一説には、多くの人が、新型コロナに罹って、人口の60%程度が集団免疫をもっているので、新たに新型コロナになる人が減ったといいますが、これは本当かどうか?しかし本当かもしれないと思われるところがインドです。

 インドの景気がだいぶよくなってきました。インドは10月がお祭りの時期で、その時期に合わせて自動車の販売が上向きます。ゴム材料の動きもいいようです。モノ不足は相変わらずですが、ここにきてちょっと変化がありました。中国からいままで高値であったゴム原材料が、ここのところ結構安く、流入を始めています。どうも中国の景気が2022年6月ごろから減速し、それでゴム原材料が余りだし、それをインドに安く売ろうとしているのでしょうか? 韓国のEPDMや中国のシリコーンゴム、ゴム薬品が結構安くオファーされているようです。

 沈む中国、せりあがるインドという構図でしょうか? それは今後10年を占う背景かもしれません。

 当社加藤事務所の合弁会社はインド・グジャラート州のVadodara市に樹脂マスターバッチ工場を持っています。下の写真のとおり、400色以上の色付け用PPマスターバッチや、添加薬品のマスターバッチを作っています。

 その町に新幹線が通ります。ムンバイとグジャラート州のアーメダバードの508キロを結ぶ新幹線で、2023年の完成を目指して工事が進んでいますが、ムンバイの近くの土地の収用率がまだ70%程度というので、全線完成は数年先でしょう。工場のあるVododara市には、運転や保守点検の研修所が完成しているそうです。日本の新幹線車両を模したシミュレーターの運転台などが設置されて、訓練が始まっているそうです。空港には下の写真が置かれ、ちょっとみると、この町に東北・秋田新幹線がくるような気がします。

400種の色見本を前に、INDO-JAPAN POLYMERS幹部らと


Vodadara空港に置かれた「新幹線がやってくる」の看板 東北・秋田新幹線車両E5系だ


 インドは国の面積が広く、西ヨーロッパと同じぐらいの面積があります。インドに進出する日本のゴム会社が、進出する地域をニューデリーにするか、ムンバイにするか、チェンナイにするか、ベンガルールにするか、よく迷うという話を聞きますが、フランスにするか、ドイツにするか、イタリア、オランダかといろいろな国で迷うのと同じです。

 ちなみに場所によって、インドでも言語が違います。紙幣には、表面はヒンディー語・英語ですが、裏面には、アッサム語・ベンガル語・グジャラート語・カンナダ語・カシミール語・コンカニ語・マラヤーラム語・マラーティー語・ネパール語・オリヤー語・パンジャーブ語・サンスクリット語・タミル語・テルグ語・ウルドゥー語の合計17の言語で、通貨の価値が書かれています。当社の工場でも、私と話すときには英語、インドの幹部同士が話すときにはヒンディー語、工員と話すときにはグジャラート語で、社長と経理部長とは、タミル語で話しています。これは全然違う言葉で、かつ発音、文字が全然違います。

ハイドラバード空港の出発案内。この時の行先名は英語、ヒンディー語でもない


 空港の表示も英語、ヒンディー語以外にいろいろな言語で表示されます。

 
 まさにインドは「多様性の国」、平たく言えば、「なんでもあり」です。 

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