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連載「ゴム業界の常識・非常識」(38)

天然ゴムの国内価格が上がると、合成ゴムの国内価格が上がる? その逆も真なり?

連載 2023-02-13

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一

 業界では、よくこのように言われています。つまり天然ゴム価格と合成ゴム価格には一定の相関性があるということです。

 その理由は、どちらも原料を含め輸入品なので、為替レートが同様に効いてるということです。天然ゴムはそのほとんどがアジア産です。基本はUS$または人民元で価格が決まり、それをベースに為替レートで円価格がきまります。一方合成ゴムはその原料の大元の原料はナフサであり、その価格は輸入ナフサUS$価格がベースで輸入時の為替レートにより円価格(¥/kl)が決まります。

 よって為替が円安になると、天然ゴムの円価格も合成ゴムの価格も上がるということになります。

 またゴムのなかで一番消費量が多いのはタイヤ向けのゴムですが、タイヤ用ゴム配合では、日本では10%ぐらいは、天然ゴムでも合成ゴムでもどちらでも安い方を選択できる、変更できる部分があります。中国ではタイヤ配合では、30%ぐらいは変更しているみたいです。だから、天然ゴムだけが価格が高くなると、比較的に安い方の合成ゴムを使用しようとしてタイヤ配合の中身を変更する動きがあり、結果合成ゴムの使用量、需要が増えます。需要が増えると、市場価格が上がります。その逆もありえます。これにより、天然ゴムの価格が上がると、つられて合成ゴムの価格も上がるということが起こるのです。最近はタイヤの性能があがり、天然ゴム、合成ゴムのそれぞれの特性を生かすため、配合が固定され、どちらを使ってもいいという選択が減り、結果天然ゴムと合成ゴムの需要の相関性が少し減ってきましたが。

 さて2022年はこの相関性がくずれました。下のグラフは合成ゴム価格を構成する、合成ゴム原料(ブタジエンとナフサ)の2022年1~12月のUS$ベースの相場価格推移と、天然ゴム、グレードTSR20の2021年夏から2023年2月までにUS$ベースの価格推移です。合成ゴム価格(SBR,BR,EPDM、NBR)もだいたいこの合成ゴム原料の価格推移に沿って価格が変動しました。

 合成ゴム原料と天然ゴムの価格グラフを比較すると、合成ゴムは2022年1月から7月にかけて価格が50%上昇しました。合成ゴムの国内価格も2022年8~10月が一番高い価格になりました。一方天然ゴムは2022年1~4月の間ではドルベースでは価格が変わらず、その後5月から10月にかけてどんどん下がりました。20%以上、下がりました。

 ブタジエン価格も確かに7月以降下がりましたが、12月には1月とほぼ同じレベルになりました。天然ゴムは1月と12月を比較すると20%ぐらい下がっています。天然ゴム価格は、合成ゴム原料価格が上がった2022年春には、上がるどころか下がりました。

 このようにいままでの相関性が働かないこともあります。2022年は天然ゴム価格の動きと合成ゴム価格の動きが全く違う動きになりました。今回は中国での需給バランスに新型コロナによる景気低迷がこのような影響を与えた可能性があります。中国でのロックダウンによりタイヤ生産が減産し、10月の党大会の決定が決まるまで様子見だという市場関係者の思惑、それらが天然ゴム需要に大きく影響を与え、天然ゴム価格は低迷し、一方合成ゴム原料価格は単純に需給バランスによって決められた。その違いによりその動きに差が出ました。2022年は特別な年だったようです。

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