連載「ゴム業界の常識・非常識」(39)
ゴム業界で注目されるサステナブルな材料、製法
連載 2023-04-04
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
ゴム業界でもサステナブルな材料、製法が注目されつつあります。SGDs、サステナブル、リサイクルがキーワードになり、いろいろなリサイクル材料、バイオ材料が開発されてきています。既存材料のコストと物性に見合う材料はまだ少ないようですが、そこはゴム会社の開発力、技術力の腕の見せ所です。
加藤が最近これは面白いと感じた材料を紹介します。いままでのゴム業界の常識をひっくり返すものです。
1)お米のもみ殻からシリカ
ゴムの補強材でシリカがあります。ホワイトカーボンともいわれています。最近の乗用車用タイヤにはシリカがたくさん使われています。さて、お米のもみ殻を燃やすと、灰になり、その灰からシリカが取り出すことができます。もみ殻の約20%はシリカが成分になっています。現在もみ殻は、土地改良剤、堆肥、畜産敷料に使われています。それを燃焼して、灰からシリカを取り出します。現在は灰からのシリカは、肥料、防虫、除草剤、飼料に使われていますが、それをゴムに配合できるのです。実はこの事実はタイヤ会社では広く知られています。もみ殻シリカは工業用ゴム部品にも使えると思います。Goodyear社のもみ殻シリカ採用についてのYouTubeはhttps://www.youtube.com/watch?v=Vx-Z1TQLnlYまで。
2)廃タイヤからのリサイクルカーボンブラック
使用済みタイヤを蒸し焼きするとカーボンブラック風の炭、熱分解オイル、灰分、スチールコードに分解できます。熱分解オイルは燃料に。そしてこのカーボンブラック風の炭は、ゴム用カーボンブラックにまぜて使えます。実際、欧米地域、タイ、インドではこれらの廃タイヤからのリサイクルカーボンブラックの製造会社がたくさんあり、新しいゴムに配合されています。さすがに補強性が少ないのですが、新品カーボンブラックの一部に置き換えが可能です。
3)半導体用シリコンウエハーの端材からのシリカ
台湾では半導体がたくさん製造されており、その半導体をつくるのにシリコン(シリコーンではありません)ウエハーが製造されていますが、その時に端材や不良品がでてきます。それを特殊処理するとシリカができます。それをゴム用シリカ、ホワイトカーボンとして使用するのです。さすがに補強性は従来のシリカより劣りますが、混ぜて使うことは可能です。実際にこのシリカが毎月数百トン規模で製造されており、一部はシューズ、ゴムマットに使われています。
4)木材パルプからリグニンフィラー
EU地区では大手パルプ会社がブナの木のパルプからリグニンを取り出し、それをゴム用補強材としての採用が検討されています。2023年にその工場がドイツに完成します。カーボンブラックの代わりに使用すると、ゴムを軽量化できます。また絶縁性があるフィラーです。ウェザーストリップへの採用も検討されています。
5)廃タイヤの微粉末 140メッシュ品、175メッシュ品
インドの会社が廃タイヤから機械的な粉砕機で、タイヤの微粉末を作りました。140から175メッシュ品まで製造できます。冷凍粉砕ではありません。某日系タイヤ会社が使用中。任意のKGにてEV袋で包装して出荷できます。サステナブルなゴム材料です。
このようなサステナブルな、リサイクル材料のゴム材料を使うことが、これからのゴム会社の先見性、環境への配慮という会社の姿勢を表すものではないでしょうか?これは大企業だけでなく、中堅、中小ゴム会社でもトライすることができます。
なおこれらの材料については(株)加藤事務所、加藤産商(株)までお問合せいただければ、サンプルを提供できます。
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