連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(46)
実は紀元前から使われていた天然ゴム
連載 2024-06-05
加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
ゴムが世の中で使われだしたのは1839年にCharles Goodyear氏が、ゴムと硫黄がストーブの熱で弾力性のあるゴムになった(加硫した)ことを発見してからということになっています。それがゴム関係者の常識ですが、実はそのずっと前から天然ゴムが使われていました。それも未加硫ゴムとして。その用途は? 球戯のボールです。
しかしそれより1000年いや2000年以上前に天然ゴムが未加硫状態で使われていたという研究、記録があります。それは球技のゴムボールとして、メキシコで、マヤ文明で、紀元前から使われていました。
ゴム人として、それはどんなものだったか、なんとか実物をみてみたい、触ってみたい。そこでメキシコまで行ってきました。その球戯をした球戯場、ゴムボールの実物を見に24年6月に行きました。行先はメキシコ・ユカタン半島の先端部近く、世界遺産のチチェン・イッツァ遺跡です。日本から飛行機で12時間、メキシコシティで乗り継ぎ1.5時間のフライトでMeridaヘそこから車で2時間です。
チチェン・イッツァ遺跡は立派な遺跡で、神殿が有名ですが、その横にこの天然ゴムボールを使って競技をした球戯場があります。下の写真のとおり、かなり広い運動場で左右に壁があります。
ここで2組のチームが、天然ゴム製のボールを腰で打って、両側の壁の上の方にあるリング状のところにボールを通してゴールとなります。ゲームというより、儀式であったという説もあり、勝利したチームのキャプテンは首を切られて神にささげられるとか。そのリングは相当高い場所にありますので、ボールの弾力性が必要です。よく腰であてて持ち上げたと感心します。
そこで使用したボールが下の写真です。ずっしり重く3~4㎏ぐらいあります。芯まで天然ゴムのようです。空気入りボールではありません。臭いをかぐとまさに天然ゴム3Lの臭いです。天然ゴムラテックスから作られ、未加硫状態です。当社が販売している天然ゴムのベールの臭いです。
さわると弾力がありますが、空気入りボールと違い、結構柔らかいのですがしっかりした弾性です。床に弾ませると、ポリブタジエンゴムで作ったジャンピングボールのようによく反発してきます。その様子はhttps://rubberstation.jp/wp-content/uploads/2024/06/NaturalrubberballinMayatimes.mp4をご覧ください。
このボールの作り方と球技の様子はhttps://youtu.be/_ZYpRsxqfFgにあります。
天然ゴムだけは、紀元前から、採取され、ボールの原料として使われていたとはびっくりです。ゴム業界の常識が変わりました。今回はメキシコ、米国出張の合間でその本物に触って、弾ませてみてきました。
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
天然ゴムはEUDR対応品と非対応品に分かれる
連載 2024-09-03
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
廃タイヤからカーボンブラックを製造する
連載 2024-04-23
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
ゴム原材料は従来のフォーミュラー価格ではもう無理
連載 2024-02-05
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
オールシーズンタイヤで雪道は走れるか?
連載 2023-12-05
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
タイヤの製造方法
連載 2023-10-04
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
フッ素ゴムが製造、使用ができなくなる?
連載 2023-08-08
-
連載コラム「ゴム業界の常識・...
中国でのEV車は日本のゴム会社にとってマイナスか?
連載 2023-06-07
-
連載「ゴム業界の常識・非常識...
ゴム業界で注目されるサステナブルな材料、製法
連載 2023-04-04
-
連載「ゴム業界の常識・非常識...
天然ゴムの国内価格が上がると、合成ゴムの国内価格が上がる?
連載 2023-02-13