6

PAGE TOP

連載コラム「ゴム業界の常識・非常識」(51)

イランのゴム産業

連載 2025-05-14

加藤事務所代表取締役社長 加藤進一
 イランと言えば、米国の経済制裁を受け、経済が非常に行き詰っている国だとの印象があります。タイヤ生産、自動車ゴム部品生産のための原料が入手できず、ろくに生産できていないと考えている人も多いと思います。しかし実際に訪問してみると、米国の経済制裁にも関わらず意外にと元気にやっている国だと感じます。加藤は2015年にイランのテヘランを訪問して、タイヤ会社数社を訪問してきました。

 イランには現在Barez Industry、DenaTire&Rubber、Pars Tire、Iran Tireの他全部で9社もタイヤ会社があり、自動車用、トラックバス用タイヤを生産しています。加藤はBarez、Dena社に訪問してベトナム産天然ゴムの商談をしてきました。Dena社は元ブリヂストンのタイヤ工場でしたが、イラン革命時に接収され国営化されてしまいました。タイヤの配合表を見せてもらうと、なんとブリヂストンの材料コード番号が、まだそのまま使われていました。同じ配合をまだ使っているのかもしれません。また元横浜ゴムが技術支援していたタイヤ会社にも行きました。見るとなんとなく横浜ゴムらしい配合でした。

Iran tire 社の事務所入り口にあるタイヤ製品



元ブリヂストンのタイヤ工場で生産されているタイヤのブランド名は“ BIRDSTONE” です。ちょっと笑ってしまいますね。


 ゴムホース、ウェザーストリップ、防振ゴム、ゴムシール材、いろいろなゴム製品がイランで現在も生産されています。カーボンブラック工場、プロセスオイル工場もあります。SBR、BRはイランで生産され、輸出もされています。

 どうやって原材料を輸入しているのか? 米国、EUからは輸入されない。もちろんドルでの決済はできません。

 実際には中国の合成ゴム、ロシアの合成ゴムが問題なくイランに輸入されているそうです。世界の超一流品は入手が難しいが、一般グレードは、購入できる。中国がいろいろなゴム原材料を供給しているようです。またドバイルート、トルコルート(これらは裏ルート?)も健在です。以下の写真はテヘラン市内の様子です。たくさん新車が走っています。

高速道路の料金所


テヘランの有名なホテルの入口にて、トヨタCAMRI車がホテルの送迎車でした。
さすがにAMEX、MASTERS、VISAのクレジットカードは使えませんでした。


テヘラン市内の様子


テヘラン市内の道路、新しい自動車が多く走っている。
イランではフランス車の技術で現地生産されています。


テヘラン市内でパトカーです。プジョー車


 中国のゴム展示会ではイランの合成ゴム会社が大きなブースで出展していました。

中国ゴム展示会RubberTechChina2024で、イランの合成ゴム会社のブースにて
Takhte Jamshid Petrochemical Complex (TJPC)社 https://www.tjpc.ir/en/home


同ブースで展示されているSBRとBR。
SBRはJSR?Goodyearの技術、BRはBF Goodrichの技術


 イランのゴム産業は米国の経済制裁によってほとんど止まっている。動いていない。というのはゴム業界の常識ではなく非常識になってしまいました。イラン、ロシア、ウクライナ、カザフスタンとまだまだゴム業界の常識が異なる国がありそうです。

関連記事

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 何を創る日本の半導体企業
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物
  • 海から考えるカーボンニュートラル