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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、ウクライナ危機で不安定化

連載 2022-03-07

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=260円の節目を挟んで揉み合う展開になった。産地主導で急ピッチな値上がり傾向が続いていたが、2月22日の265.20円をピークに上げ一服となっている。ただ、大きく反落するような動きまではみられず、260円水準で一進一退の攻防になった。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万3,550元まで急落して2021年9月27日以来の安値を更新した後、1万4,000元の節目水準まで切り返す不安定な値動きになった。

 2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まり、マーケット環境は極端に不安定化している。ゴム相場に関しては、強弱双方の影響が考えられるため、値動きが不安定化した。

 コモディティ市場に目を向けると、各国が対ロシア制裁に踏み切ったことで、ロシア産資源供給の不透明感がコモディティ相場全体を押し上げている。原油や天然ガスといったエネルギーを筆頭に、非鉄金属や穀物相場まで、数年来の高値を更新しているものも目立つ。特に原油高は合成ゴム価格の値上げ圧力に直結するため、NY原油先物相場が2008年9月以来の高値を更新していることはポジティブ。インフレ懸念の高まりを背景に、ゴム需給に関係なくゴム相場も値上がりしやすい環境にある。

 一方で、各国が対ロシア制裁に踏み切り、資源価格が軒並み高騰するなか、世界経済の減速懸念も同時に高まっている。ロシアが国際決済網SWIFTから排除されることで、世界のサプライチェーンに新たな混乱が生じるリスクも警戒されている。ウクライナ情勢を取り巻く緊張状態が維持されると、景気減速とインフレが同時進行するスタグフレーションに発展するのではないかとの警戒感が高まっていることはゴム相場に対してネガティブである。

 この結果、ウクライナ情勢のゴム相場に対する影響は評価が割れ、高値波乱気味の不安定な値動きになった。

 産地相場も高値波乱になっている。2月入りしてからはウインタリング(落葉期)の開始に伴う減産圧力を織り込む形で急伸してきたが、ロシアのウクライナ侵攻が始まってからは、明確な方向性を打ち出せていない。季節要因から集荷量は抑制された状態が続いているが、タイ中央ゴム市場の現物相場は3月3日時点で、USSが前週比0.1%安の1キロ=65.36バーツ、RSSが同0.9%高の69.01バーツ。高値水準を維持していることが、JPXゴム相場の下値をサポートし続けているが、産地主導の上昇には一服感も目立つ中途半端な地合になっている。ウクライナ危機をどのように消化するのか、産地・消費地ともに気迷いムードの強さが目立った。

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