とある市場の天然ゴム先物 21
【国内1号】神戸のゴム先物取引所はどれくらいの取引があったのか?
連載 2021-08-24
神戸ゴム取引所の取り組み
このように一定の取引規模を維持しており、国際化にも積極的に取り組んでいた神戸ゴム取引所ですが、上場商品はRSS3先物のみであり、次第にRSS3先物の単独商品で取引所を存続させるのは厳しい経営環境になっていきました。折しも、東京ゴム取引所が1984年に東京金取引所、東京繊維取引所と合併し、東京工業品取引所が発足した時期でもあります。
そこで1989年より、総合的なゴム取引所となることを目指し、欧米で主力となっていたTSR20の先物の上場計画に着手したものの、当業者団体等から「時期尚早」との意見が相次いだことで1991年に計画が頓挫してしまいます。
そこでTSR20に繋がりのある関連商品の検討を進めた結果、受渡しを行わない「指数」の形で先物を上場することを決め、震災直後の1995年3月10日に、日本初の商品指数先物である「天然ゴム指数先物」の取引を開始することとなりました。
神戸ゴム取引所 天然ゴム指数先物の指数構成銘柄
注:シンガポールのTSR20は1997年10月にFOB Contractに変更。
出所:神戸ゴム取引所「46年史」より筆者作成
このゴム指数先物ですが残念ながら定着することはなく、二度の合併を経て中部大阪商品取引所が発足したのち、2010年に取引を休止することとなりました。複数の天然ゴムの混合指数という商品設計のため、ヘッジ目的では使いにくく、かつ取引所の体力が落ちているなかで、指数に投資をするようなプレイヤーを育てることができなかったものと想像されます。
またTSR20先物については、神戸ゴム取引所が合併後の大阪商品取引所において2000年8月に取引が開始されましたが、こちらも2009年に取引が休止されます。
その後、2018年10月に東京商品取引所(現日本取引所グループ傘下)においてTSR20先物が改めて上場することになりますが、残念ながら現在まで取引は低調に推移しています。シンガポールで取引されているTSR20先物の取引高が急拡大を始めるのは2014~15年頃であり、もしこのタイミングで日本にTSR20先物があったとすれば、現在とはまた違った風景になっていたのかもしれません。
大震災とその後の神戸ゴム取引所
神戸ゴム取引所を語るうえで、阪神・淡路大震災に触れない訳にはいきません。
1995年1月17日、阪神淡路地方に大地震が襲います。この大地震によって神戸ゴム取引所のビルが崩壊し、市場が開設できない状況まで追い込まれました。ビル崩落の可能性があるなか、職員が決死の覚悟で倒壊した事務所のコンピュータからデータを取り出し、関係者の必死の努力により、早くも1月25日には大阪繊維取引所の立会場を借りて取引を再開できました。
この震災をきっかけとして、神戸ゴム取引所は1997年に大阪繊維取引所と合併して大阪商品取引所としてスタートすることになります。
過去、1978年に神戸ゴム取引所の大阪移転が検討されたことがありましたが、その当時は神戸の経済界から大きな反対を受けて計画が頓挫しました。この移転計画は取引所の経営基盤の強化を目指し、他商品取引所との将来的な経営統合を念頭に入れたものでしたが、震災という不可避の出来事により、図らずもこの過去に目指した計画が実現することとなりました。
しかし2000年以降に多くの商品取引所の経営が苦境に晒されており、2007年1月に中部商品取引所と大阪商品取引所が合併して中部大阪商品取引所が発足するものの、中部大阪商品取引所は2011年1月に経営不振により解散することとなります。
1952年に開始された神戸ゴム取引所から引き継がれたゴム先物は、中部大阪商品取引所において2009年4月10日にTSR20先物、2010年3月11日に天然ゴム指数先物の取引が休止され、2010年6月25日には、半世紀以上の歴史を持つRSS3先物がとうとうその歴史に幕を閉じることになりました。
神戸ゴム取引所より引き継いだ検査台
神戸ゴム取引所より引き継いだ、受渡・品質委員会で現在でも活躍している木製の検査台。下から電灯の光を照らすことで天然ゴムに含まれる不純物などを見つけやすくなる。丁寧に取り扱わないと壊れそうなため、エレベーターで移動させる際には特に注意が必要。
出所:日本取引所グループ
今回は日本で最初の天然ゴム先物取引所であり、市場の発展に大きく貢献してきた神戸ゴム取引所についてまとめてみました。残念ながら神戸由来の天然ゴム先物は歴史の幕を閉じてしまいましたが、今でも神戸にはゴム関連の企業が数多くあり、これからもゴムの聖地として輝き続けて行くことでしょう。
※次回の更新は2021年9月7日(火)頃の予定です。
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