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とある市場の天然ゴム先物 14

天然ゴム先物価格はゴム関連株の先行指標となるか???

連載 2021-05-11

短期の値動きへの影響

 先ほどご紹介した「ゴム製品」に分類される上場会社のうち、原材料として天然ゴムを使用しているところは多いと考えられます(ただし石油由来の合成ゴムをメインで使用している会社もあることには注意が必要です)。

 そうした会社にとっては、天然ゴム価格(原材料価格)が上昇するということは収益の圧迫要因となることから、株価にも何らかの影響が出る可能性があります。

 それでは天然ゴム価格の国際指標として広く認知されている大阪取引所の天然ゴム(RSS3)先物の値動きを見ることによって、ゴム製品株の動向を予測することができるものでしょうか?

 まずは短期の値動きから見てみましょう。ここでは分かりやすいように、大手タイヤメーカー4社の株価とRSS3先物価格を2020年1月から比較してみます。

天然ゴム(RSS3)先物と大手タイヤメーカー株価の比較

※2020年1月6日を100として計算。
出所:日本取引所グループ


 まず2020年からの天然ゴム(RSS3)先物の値動きですが、2020年初よりコロナ感染拡大の影響を受けて天然ゴム需要が減少し、4月には底値を付けることになります。

 その後、しばらくは低位安定が続きましたが、夏頃から中国経済がV字回復の兆候を見せ始めたことに加え、日本国内で天然ゴムの在庫不足が表面化したことで価格が上がり始め、2020年10月末には短期間で一気に高騰しました。その後は方向感が定まらないまま、2020年初から10~30%高い水準のレンジで推移しています。

 一方、この間の大手タイヤメーカー各社の株価を見てみますと、各社水準は異なりますが似たような動きをしていることが分かります。

 天然ゴム先物と同じくコロナ感染拡大の影響を受けて年初から大きく下げたのち、4月から6月にかけて反転して一度6月にピークを付け、8月以降にタイヤ需要見通しの回復に歩調を合わせてなだらかに上昇を始め、2021年以降はその動きが顕著になっています。

 ここで繰り返しになりますが、天然ゴム先物価格の上昇は原材料費の上昇に繋がるため、タイヤメーカーにとっては株価の下押し要因になると考えられます。

 その文脈では2020年8月からの天然ゴム先物価格の急上昇はネガティブなインパクトとなりそうなものですが、各社の株価はそこまで大きな影響を受けていないように見えます。強いて挙げるとすると、先物価格が短期で急騰した10月末の1週間で各社の株価が5~10%程下落したくらいでしょうか。

 もちろん観察する期間によって異なるでしょうし、極端な急騰の場合は短期的に収益に影響が出ることもあるでしょうが、少なくとも2020年初から2021年5月までの値動きを見る限り、全般的には天然ゴム先物と大手タイヤメーカーの株価の短期値動きの関連性は低そうだと言えそうです。

 こうした背景としては、各社の株価につき、①当然のことながらマクロ経済動向(タイヤ需要動向)の方がより大きなインパクトがある、②原材料価格が継続的に上昇する状況にまでは至っていないと見られた、③ある程度の原材料価格上昇は売上増加や費用削減、製品価格改定等により対応可能なため、インパクトは小さいと判断された、などが考えられるでしょう。

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