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とある市場の天然ゴム先物 13

サステイナビリティ対応を進める海外市場の事例紹介

連載 2021-04-20

ケーススタディを通じて見えること

 2つの事例から、取引所の先物の受渡供用品にサステイナビリティ基準を組み込んで効果を出すためには、「サプライチェーンの全ての関係者に受け入れられている基準があるか」、「その先物に競争優位性があるか」といった点が重要であることが分かります。

 例えばサステイナビリティの基準が乱立していたり、国際的な基準があってもステークホルダー間で受け入れられていなかったりする場合、そうした基準を採用しても効果は少ないでしょう。また取引所で独自の基準を作ったとしても、サプライチェーン全体で有効に機能することは難しいと思われます。

 また先物の市場シェアが分散されている場合、ある取引所が厳しい基準を導入したとしても、その取引所を避けて緩い基準の取引所に取引が移ってしまい、結果としてサステイナビリティへの取り組みでインパクトを与えることはできなくなります。

 さらに重要なことは、各コモディティによってサプライチェーンに様々な特色があり、また業界の対応状況や取引所の競争環境なども異なることから、全ての取引所やコモディティに適用できるようなサステイナビリティ基準(いわゆる”One size fits all solution”)は存在しない、ということです。

 したがって天然ゴム先物においてサステイナビリティ対応を検討する際には、まず天然ゴム業界の特徴をしっかりと把握し、他のコモディティや市場における先行事例を学んだうえで、サプライチェーン全体の様々なステークホルダーと協力しながらスキームを構築することが何より大事である、と言えるでしょう。

※次回の更新は2021年5月11日(火)頃の予定です。

【参考資料】
Bursa Malaysia “The Malaysian Sustainable Palm Oil (MSPO) Certification Requirement for Crude Palm Oil Futures (FCPO) Contract Physical Delivery”
FIA “Bursa Malaysia palm oil futures updated for sustainability”
IUCN “Setting the Biodiversity Bar for Palm Oil Certification”
LME “Responsible Sourcing”
OECD “OECD Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains of Minerals from Conflict-Affected and High-Risk Areas”
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「持続可能性に配慮したパーム油を推進するための調達基準」
富田英揮「ロンドン金属取引所(LME)におけるESGへの取組みについて」

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