とある市場の天然ゴム先物 10
【用語・データ集④】海外と日本のゴム先物市場を比較して見えること
連載 2021-03-09
各市場のデータ比較から見えてくること
これまで見てきた各取引所の天然ゴム先物の商品概要や統計情報などは、各社のウェブサイト上で取得することができます(SGX、SHFE、INE、TFEX、MCX、ICEX)。
ここでは天然ゴム先物の主要取引所のデータを中心に見てみましょう。
主要天然ゴム先物市場の取引高、取組高(2020年)
出所:JPX, SGX, SHFE, INEよりJPX作成
2020年の取引高や年末取組高を見ると、中国のSHFEの規模が圧倒的なことが分かります。なおSHFEやINEの取引は先物1枚=10トンであり、OSEやSGXは1枚=5トンですので、天然ゴムの重量ベースに換算すると更に差が開くこととなります。
中国市場が急拡大する2000年初頭までは、日本の天然ゴム先物が最も流動性の高い市場でした。日本での過去最大の年間取引高は1995年の14,287,783枚でしたが、SHFEの現在の取引高はその水準を遥かに凌駕しています。
とはいえSHFEは海外投資家にオープンになっていませんので、海外投資家が取引できるRSS3先物という点では、日本は取引高、取組高ともに世界一の地位を保持していると言えます。
主要天然ゴム先物市場の取引高、取組高推移
出所:JPX, SGX, SHFE, INEよりJPX作成
直近6年の取引高、取引高推移のデータからは、SGX・INEのTSR20先物の規模が大きくなったこと、一方でOSE・SGXともにRSS3先物の市場流動性が減少していることが分かります。この背景としては、タイヤメーカー等のTSRへの需要拡大が続いてRSSのシェアが大きく減ったという、グローバル・サプライチェーンの構造的な変化が大きく影響していると考えられます。
日本でも2018年にTSR20先物が上場しましたが、現在のところ市場流動性の獲得に苦戦しています。そこでユーザーの利便性を向上させるとともに海外市場との連携を強化することで、市場流動性を何とか改善していこうとしているところです。
また海外取引所の取引高や取組高以外のデータとしては、日本と同様に受渡高(SGX、SHFE・INE)や認定倉庫の在庫統計(SHFE・INE)などもウェブサイト上で公表されています。
こうした国内外の天然ゴム先物市場の統計データは、英語となりますがOSEの「ウィークリー・ストラテジーレポート」(毎週月曜更新)でも確認することができます。
さて今回は海外市場の歴史やデータを中心にご紹介しました。国内外の天然ゴム先物市場間の取引制度の違いなどは、毎月更新の「天然ゴム先物Factsheet」でもまとめています。こちらもぜひご覧くださいませ!
※次回の更新は2021年3月23日(火)頃の予定です。
【もっと知りたい方に!】
Austin Coates “The Commerce in Rubber – The first 250 years”
JPX「ゴム先物情報」
Peter W.C. Tan “Singapore Rubber Trade – an Economic Heritage”
TOCOM「ゴム取引の基礎知識」
谷沢竜次「シンガポールゴムの思出」
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