とある市場の天然ゴム先物 10
【用語・データ集④】海外と日本のゴム先物市場を比較して見えること
連載 2021-03-09
各国の市場創設のあゆみ
それでは各国の天然ゴム先物市場創設のあゆみについて駆け足で見てみましょう。なお日本の天然ゴム先物市場の歴史は第3回の記事で取りまとめています。
【シンガポール】
シンガポールの天然ゴム先物は1980年代後半までRubber Association of Singapore (RAS)の自主規制の下で取引されており、同時代の日本のような公式な取引所における取引ではありませんでした。しかしながら1988年にRAS認定ブローカーが破綻したことで自主規制の枠組みでの市場の限界が露呈し、システム取引や清算決済制度を備えた取引所取引が模索されることとなります。
そこでRASは1992年に民営化され、名称もRubber Association of Singapore Commodity Exchange (RASCE)と名称を変更し、取引所取引としての天然ゴム先物市場がスタートすることとなります。更に1994年にはSingapore Commodity Exchange (SICOM)に再び名称が変更されます。
現在でもシンガポールの天然ゴム先物はSICOMと呼ばれるように、当時からSICOMの先物市場自体はゴム関係者によく知られていました。その一方で取引高は長らく苦戦が続き、結果として2008年にSICOMはSGXに買収され、天然ゴム先物はSGXの下で取引を続けることとなります。
【中国】
中国で天然ゴム先物の取引が開始されたのは、市場経済への移行を進めていた1993 年と割と最近となります。
SHFEにおける当初の取引高はそこまで多くありませんでしたが、2000年代の急速な経済成長によって中国が世界最大のゴム消費国に躍り出ることとなり、それに歩調を合わせる形で先物市場も急成長を遂げます。
さらに2019年8月にはINEにTSRの先物が上場され、こちらも国内の巨大な消費、投資需要に支えられて瞬く間に存在感のある市場へと成長を遂げました。今後、中国市場の海外投資家への開放が進むとともに、世界における中国のゴム先物市場の存在感はさらに大きくなっていくと予想されます。
【タイ】
タイは2021年時点で世界最大の天然ゴム生産国ですが、ASEANのなかでも優等生と言われるように順調に経済発展を続けており、天然ゴムの消費量も2000年代に入り伸びてきています。
そこで生産者・消費者両方の先物取引需要の獲得を目指して、2004年に初の天然ゴム先物となるRSS先物がタイ農産物先物取引所(AFET)に上場されました。その後2016年にAFETはTFEXに吸収合併され、2020年11月にはTFEXにおいて日本のRSS3先物の価格を使用したJapanese Rubber Futuresが上場されました。
タイやインドの天然ゴム先物市場の規模はまだまだ小さいですが、息の長い経済成長と国内天然ゴム需要の更なる拡大が期待されることから、将来的には先物市場が発展するポテンシャルは大きいものと思われます。
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