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とある市場の天然ゴム先物 10

【用語・データ集④】海外と日本のゴム先物市場を比較して見えること

連載 2021-03-09

大阪取引所 デリバティブ市場営業部 矢頭 憲介

 前回では用語解説とデータの探し方の第3弾として、ゴム先物市場における天然ゴム現物の需給を測る指標についてご紹介しました。今回は海外のゴム先物市場のあらましやデータを見てみましょう。

天然ゴム先物市場はアジアが中心

 戦前の天然ゴムの取引や価格の決定はロンドンが中心で、先物市場(定期市場)はロンドンのほかに、自動車産業の中心で天然ゴムの最大消費市場であった米国のニューヨークや、天然ゴムの貿易拠点の一つであったシンガポールにも存在していました。

 これが戦後になると、生産地に近く主要消費国に直接輸出が可能なシンガポールに天然ゴム貿易の中心が移っていき、ロンドンやニューヨークは徐々に取引市場としての意義を失っていきます。

 更に1980年代になると、HIVの感染防止対応として医療用ゴム手袋等の需要が拡大し、それを受けてマレーシアやタイに生産工場が次々に建設されたことで、欧米の多くの工場が閉鎖されることとなりました。

 こうしたゴム産業の構造的な変化が背景となり、ロンドン、ニューヨークのゴム先物市場は1980年代に役割を終えて取引を終了することとなります(詳細は第2回「世界初の先物と天然ゴム先物の「共通点」とは?」)。

 なお戦後に設立された天然ゴム先物市場では、経済復興を進める日本が1950年代に神戸と東京で、市場経済体制への移行を進める中国が1990年代に上海で取引を開始し、急速な経済成長を背景に市場が発展していきます。

 現在では、天然ゴム先物はアジアの取引所が取引の中心となっています。日本の大阪取引所(OSE)以外では、中国の上海期貨交易所(SHFE)と上海国際エネルギー取引所(INE)や、シンガポールのシンガポール取引所(SGX)、タイのタイ先物取引所(TFEX)、インドのインディアン商品取引所(ICEX)、マルチ商品取引所(MCX)などで取引されています。

世界の天然ゴム先物市場

出所:JPX

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